イングランド<上>誕生「200年」広がる裾野

 ラグビー校近くに立つエリス少年の像。1823年、エリス少年はフットボールの試合中、ルールに反してボールを持って走り出し、ラグビーを生み出したという伝説がある(矢萩雅人撮影)
ラグビー校近くに立つエリス少年の像。1823年、エリス少年はフットボールの試合中、ルールに反してボールを持って走り出し、ラグビーを生み出したという伝説がある(矢萩雅人撮影)

ラグビーワールド・イングランド<1>

英国中部の小さな都市、ラグビー市で、ラグビーは生まれた。れんが造りの建物が立ち並ぶ落ち着いた街の中にあるパブリックスクール(名門私立校)の「ラグビー校」。競技名の由来はここにある。

1823年、生徒のウェブ・エリス少年が学校のグラウンドで行われていたフットボールの試合中にボールを抱えて走り出し、ラグビーが生まれた――。この「伝説」の真偽は定かではないが、その22年後にこの学校で決められた競技規則は残っている。

まだサッカーが誕生していない時代。大人数がボールを蹴るなどして相手ゴールを目指す当時のフットボールは学校ごとに話し合いで規則を決めていた。同校の広報担当、ポール・ジョセフ氏は「大事なのはここでルールが作られ、今、世界のラグビーにつながっていること」と誇らしげに語る。

協調性や自己犠牲を尊ぶラグビーは、エリートを育成する教育の柱として、富裕層の男子が通うパブリックスクールで広まった。ジョセフ氏は「ハードワークや規律、他者への敬意を学べる。それは競技だけでなく、人生でも『核』になるものだ」と説明する。同校の男子生徒はラグビーが必修とされ、同じ中部の伝統校アウンドル校などとの定期戦で切磋琢磨する。

「上流」イメージ薄まる

 ロンドンで開催された学校対抗戦。多くの子どもたちがラグビーに取り組み、心身を鍛える=岡田浩幸撮影
ロンドンで開催された学校対抗戦。多くの子どもたちがラグビーに取り組み、心身を鍛える=岡田浩幸撮影

社会のリーダーを多数輩出してきたこともあり、ラグビーは「上流階級のスポーツ」のイメージが強い。

一方、アウンドル校のダニー・グルーコック・スポーツディレクターは「国際化が進み、『サッカーは労働者階級のもの』という固定観念はなくなっている」と語る。イングランドラグビー協会によると、ラグビーに取り組む公立校が増えており、3月にロンドンで開かれた7人制の学校対抗戦に900以上のチームが参加した。

女子の競技人口も急激に増えている。1980年頃から大学などで女子チームが結成され、90年に全国大会が始まった。2017年にはプレミアリーグが発足した。500以上の女子チームが活動しているという。

人気を後押しするのが、17年女子ワールドカップ(W杯)で準優勝した代表チームだ。今季は欧州女王を決める「6か国対抗」で全勝優勝を達成した。同協会のスティーブ・グレインジャー振興部長は「彼女たちのエキサイティングなプレーが女性の心を刺激した」と語る。1月、代表の28選手が協会とプロ契約を結んだ。主将のサラ・ハンターは「大きな一歩。女子ラグビーはまだまだ発展する」と話す。

1976年に共学となったラグビー校も、かつて対戦相手が見つからず諦めた女子ラグビーを数年以内に始めたい考えだ。協会のグレインジャー部長は「女子ラグビーは市民権を得て、女性が社会の中で他者と交流し、つながるツールになっている」という。ラグビーは、より広く、深く、「母国」の大地に根を伸ばしている。

開幕まで約5か月となったW杯日本大会に出場する国・地域でラグビーはどのように根付き、発展したのか。現地を歩いた。

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