アイルランド<下>協会がプロ選手全員を掌握

選手の育成について語るレンスターのバルフ会長(右)(ダブリンで)=帯津智昭撮影

スタンドから学生たちの熱のこもった応援が響いた。2月のある日、ダブリン市内の競技場。ブラックロック校とベルベデーレ校というラグビーが盛んな名門私立校同士が対戦し、よく似たボーダー柄のジャージーを着た両チームの選手たちが体をぶつけ合っていた。

「うちのスカウトが何人も見ているよ」。簡素なスタンドの一角で、強豪プロクラブ、レンスターのローキャン・バルフ会長が笑顔で語った。15、16歳の生徒たちのプレーは激しく、個々のレベルも高かった。

ラグビーは上流階級のスポーツというイメージが残るアイルランドでは、ブラックロック校などから将来性のある選手をクラブが発掘し、アカデミーで育成する流れがある。アイルランド代表最多133キャップを誇る元主将のブライアン・オドリスコル氏(40)はブラックロック校OBで、レンスターのアカデミーで育った。「彼は15、16歳の頃は背が低く、チームに入れなかった。才能は遅れて出てくることもある」と、バルフ会長は懐かしむ。

「全ては代表のために」

ダブリンの名門私立校同士の試合。レンスターのスカウトが有望選手をチェックしていた(2月4日)=帯津智昭撮影

1995年の国際ラグビーボード(現ワールドラグビー)によるプロ容認後、アイルランドでは強化の仕組みが整えられた。欧州などの14クラブで構成する国際リーグ「プロ14」で2017~18年シーズンに優勝したレンスターをはじめ、北アイルランドを含めたアイルランド島内4地域のプロクラブで選手を鍛える。代表選手の出場試合数やコンディションは、協会が一括して管理する。アイルランド協会の最高執行責任者、ケビン・ポット氏は「全ての活動は、代表チームが最高のパフォーマンスを出すことを一番の目的としている。アイルランドでプレーする全てのプロ選手が協会と契約し、私たちの統治下にある」と話す。

現在、世界ランキング3位で、今秋のワールドカップ(W杯)日本大会で頂点を狙うアイルランドの強さの背景には、子供たちへの指導法もある。

成城大の海老島均教授(スポーツ社会学)は、留学時代にクラブチームでプレーし、ダブリンのゴンザガ校でのコーチ経験もある。ゲーム形式の練習の際、当時、能力のある生徒がパスをせずに1人でトライを狙って走ったことがあった。独りよがりなプレーとみて注意すると、同僚コーチから「彼は自分だけでどこまで行けるかと思ってやってみたんだろう。無理だと判断したら、パスをするはず」と、たしなめられた。海老島教授は「こういう教え方が、プレーのひらめきを生み、個人の判断力を伸ばすことにつながるのではと思った」と振り返る。

子供たちの才能を伸ばし、能力のある選手を育て、代表レベルでは体調管理などを徹底する。しっかりとした強化体制が、初の世界王者を目指す強豪を支えている。(アイルランド編は、帯津智昭が担当しました)

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