イングランド<下>母国の誇る「聖地」

試合日には大勢のファンが訪れるトゥイッケナム競技場(3月16日、岡田浩幸撮影)

ロンドン郊外のトゥイッケナム競技場は、興奮といらだちが入り交じる異様な雰囲気に包まれた。3月16日、伝統の欧州6か国対抗。地元イングランドはスコットランドから前半に24点のリードを奪いながら、後半に一時逆転され、何とか38-38の引き分けに持ち込んだ。前回ワールドカップ(W杯)で日本代表を率いたイングランドのエディー・ジョーンズ監督は「いい教訓になった」と反省した。

1909年に初めて試合が開催されたこのスタジアムには「THE HOME OF RUGBY」の文字が掲げられており、「ラグビーの聖地」と呼ばれる。その一角に、ワールド・ラグビー博物館がある。

所蔵品は多岐にわたる。競技として確立されていない1820年代の革製ボールは、
楕円(だえん)
形ではなく真球に近い。45年にラグビー校で作られた小冊子の競技規則は「ノックオンとは腕、手に当ててボールを前に進めること」などのルールが記されている。1905年のイングランドのジャージーは白いセーターのようで、今と同じバラのエンブレムがあしらわれている。

目を引くのは南米やアジア、アフリカ諸国のジャージーや歴史も詳しく紹介していることだ。「イングランド協会の基金で運営しているが、我々は世界のラグビーの遺産や伝統を扱い、協会もその重要性を認めている」。フィル・マクガワン館長の言葉は、イングランドこそが世界に広がったラグビーの発信地だという自負を感じさせる。

1909年初試合伝統を発信

日本の特別展が開催されているワールド・ラグビー博物館(3月16日、岡田浩幸撮影)

その館内で今、日本の特別展が開かれている。「1853年の黒船来航を機に開国し、その後、横浜でクラブが設立された」「20世紀初めに慶大から他の大学に広がった」――。経済成長とともに社会人ラグビーが盛んになり、2015年ワールドカップ(W杯)で南アフリカから金星を挙げたことも紹介している。

アジア初開催となるW杯に、マクガワン館長は「最もユニークな大会になる」と期待を寄せる。昨秋、日本代表がトゥイッケナムでイングランドに善戦したことが、さらに日本の株を上げた。同館長は「日本にはラグビーへの情熱や人々のつながり、寺院や文化など歴史と伝統もある。世界中のファンがそれに触れる絶好の機会だ」と語る。

展示フロアの奥に、1930年に初めて結成された日本代表の初代監督を務めた香山
蕃(しげる)
氏の言葉が記されている。「(エンブレムの)桜はフェアプレーの精神を表し、『サムライ』の魂の象徴である。美しく咲き、美しく散る。そんな心が日本に必要だと確信する」

見学に訪れたロンドン在住のスミス・ジョーンズさん(41)はW杯のチケットを購入した。「南アフリカを破った試合は感動的だった。この魂の国に早く行ってみたい」。ラグビーの「母国」も日本大会を心待ちにしている。(イングランド編は岡田浩幸、矢萩雅人、帯津智昭が担当しました)

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