ウェールズ<中>日本企業 代表の「胸」に

カーディフにあるビールメーカーの広告。ジャージーの胸の部分には「ISUZU」の文字=帯津智昭撮影

カーディフの中心街には、地元ビールメーカーの大きな広告がある。ラグビーのウェールズ代表主将、アルンウィン・ジョーンズとともに、赤いジャージーの胸に躍る「ISUZU」の白い文字が目に入ってくる。「日本の自動車メーカーだというのは、もちろん知っている。何の違和感もないよ」。ラグビーグッズ店のジェイソン・コイルさん(46)はそう話す。

いすゞ自動車は2017年6月に胸スポンサーになった。現地では荷台のついたピックアップトラックが人気で、同社の萩原竜之コーポレートコミュニケーション部長は「ウェールズが欧州6か国対抗で優勝したことで、露出が増えた」と喜ぶ。一方で、ウェールズラグビー協会は、第2ジャージーの胸スポンサーとして、同じく日本の自動車メーカーのSUBARU(スバル)を選んだ。ライバル企業2社の支援を同時に受ける異例な契約について、協会は今秋のワールドカップ(W杯)日本大会での成功や代表チームの世界的なアピールにつながると期待している。

炭鉱の衰退後 多数進出

カーディフ・ブルーズの本拠地でウェールズへの思いを語る杉浦さん=帯津智昭撮影

日本人にとって、ウェールズの知名度はそれほど高くない。しかし、ウェールズの人たちにとっては日本は親しみのある国だ。理由には多くの日本企業の存在がある。

ウェールズの主力産業だった炭鉱業が衰退した1970年代初め。英国政府は雇用を生み出すため、日本企業を誘致した。ウェールズにはプラスチック加工大手のタキロン(現タキロンシーアイ)が72年に製造業としては初めて進出し、ソニー、松下電器産業(現パナソニック)などが続いた。現在、40社以上の日本企業が進出している。政府機関の広報などを務めたベット・デービスさんは「炭鉱で働いていた人たちはチームワークが良かった。日本企業でもよく働き、そこでの知識や経験はウェールズのレガシー(遺産)になった」と語る。

逆に、ウェールズの魅力にはまった日本人もいる。長野県岡谷市出身で、ソニーの駐在員として74年に赴任した杉浦哲俊さん(71)は、「ソニーは米国の会社だと思われていて、自分は中国人とみられた」と昔を振り返って笑う。工場操業に携わって帰国。その後、ライバルの松下電器に入り、再びウェールズへ。現地で結婚し、今も住み続けている。カーディフを本拠地とするラグビーのプロクラブ「カーディフ・ブルーズ」のファンで、シーズンチケットを購入するほどの熱の入れようだ。

ウェールズ代表の応援のため、W杯では日本に足を運ぶ。熊本でのグループリーグのウルグアイ戦や大分での準々決勝などを観戦する予定で、「ウェールズ対イングランドの準々決勝になるかもしれない」と杉浦さんは期待に胸を膨らませる。W杯は、日本とウェールズとのつながりを再認識する機会になる。

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