スコットランド<上>「母国」への対抗意識

 試合後にイングランドの選手と握手するスコットランドの選手たち(手前側、3月16日)=ロイター
試合後にイングランドの選手と握手するスコットランドの選手たち(手前側、3月16日)=ロイター

ラグビーワールド・スコットランド〈上〉

英国北部のスコットランドにある古都エディンバラは、ラグビーの国際試合の歴史が始まった場所である。1871年3月27日。4000人の観客が集まったと伝えられる世界最初のテストマッチ(国・地域の代表チーム同士の国際試合)は、地元スコットランドがラグビーの「母国」イングランドを破った。

スコットランドは英国の連合王国を構成する4地域のうちの一つ。人口は約540万人とイングランドの10分の1程度だが、長年にわたり、対抗意識を燃やしてきた。「イングランドに勝つのは名誉なこと。どのチームよりもイングランドに勝った試合が我らの脳裏に残る」。スコットランドラグビー協会のマット・ホーラー広報部長はそう話す。

特に1990年の欧州5か国対抗(当時)最終戦で、劣勢の前評判を覆して宿敵を13―7で撃破し、4年ぶりの優勝を果たした一戦は、「スコットランドの歴史に残る試合」(ホーラー部長)とされる。

「独立」の誇り背負う代表

 英国の国旗や欧州連合(EU)の旗とともに掲揚されているスコットランドの「国旗」(中央)(エディンバラで)=帯津智昭撮影
英国の国旗や欧州連合(EU)の旗とともに掲揚されているスコットランドの「国旗」(中央)(エディンバラで)=帯津智昭撮影

かつて独立した王国だったスコットランドは、1707年にイングランドに統合された。人々の間には従属させられてきたという思いが今も残るという。

一方、同年に消滅した自治議会が1999年、英国のブレア政権による地方分権政策の一環として復活し、医療や教育などの分野で独自の権限を持つようになった。2014年9月には、英国からの独立の是非を問う住民投票が実施された。投票率84・6%と高い関心を集める中、反対55・3%、賛成44・7%で独立は否決された。

そして、欧州連合(EU)からの離脱問題で英国が揺れる今、独立の機運が再燃しつつある。16年の国民投票ではEU残留派が優勢だったこともあり、スコットランド自治政府の首席大臣は4月下旬、EU離脱なら、独立への賛否を問う2度目の住民投票を21年5月までに行いたい意向を表明した。

政府機関で働いていたエディンバラ在住のサンディ・カメロンさん(66)は「住民の中には独立の投票をもう一度望んでいる人もいる。スコットランドとイングランドは元々は別々の国。スコットランド人としてのアイデンティティーは強い」と語る。単独の代表チームがあるラグビーは、そういう人々の思いを背負って戦っているのだ。

だから、イングランドはいつでも特別な相手であり続ける。137度目の対戦となった今年3月の6か国対抗。前半に7―31とリードされながら、後半に5トライを奪い、38―38の引き分けに持ち込んだ。英BBCは「148年間のライバル関係の中で、最も注目に値する驚きの引き分け」と評した。通算対戦成績は、スコットランドの43勝19分け75敗。ライバル対決はこれからも続いていく。

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