スコットランド<下>ビジネス成功 相乗効果

キルトを着て応援に向かうシンプソンさん=帯津智昭撮影

スコットランド代表が本拠地とするマレーフィールド競技場の周辺で、ファンを歓迎するバグパイプの音が響いた。2月9日、エディンバラで行われた欧州6か国対抗のアイルランド戦。続々と集まってくるファンの中に、タータンチェック柄のスカートに似た伝統衣装「キルト」を身にまとう男性の姿が目立った。

「ここで応援する時は毎回、キルトを着る。気が引き締まるんだ」。北方のインバネスからバスで約4時間かけて来たというスティーブン・シンプソンさん(68)は誇らしげに言う。真冬に脚を出すキルトは寒そうに見えるが、スコットランド特産のスコッチウイスキーの小瓶を懐から取り出し、「こうやって体の中から温めるんだ」と笑って少し飲んだ。

1707年まで独立した王国だったスコットランドは、キルトをはじめとした独自の伝統や文化を持つ。教育にも熱心で、イングランドに大学が二つしかなかった時代に、「進化論」のチャールズ・ダーウィンが学んだエディンバラ大など4大学があった。蒸気機関を発明し、産業革命の礎を作ったジェームズ・ワットらを輩出。19世紀には、貿易商トーマス・グラバーが来日し、炭鉱の技術発展など日本の近代化に貢献した。

先進的な精神は、今も生きている。「我々のビジョンはグローバル化だ。世界に発信し、ブランド価値を上げていきたい」。スコットランドラグビー協会のドミニク・マッケイ最高執行責任者(COO)は語る。

人材補強 代表底上げ

マレーフィールド競技場に集まったスコットランド代表のファンら(2月9日、エディンバラで)=帯津智昭撮影

協会は、新たな市場を開拓しようと、シンガポールと米国との関係を強めようとしている。昨年6月には、代表チームが米ヒューストンに遠征し、米国代表と対戦した。今秋のワールドカップ(W杯)日本大会は、アジアでのブランド価値を高める機会と捉え、大会前にU16(16歳以下)代表が日本を訪れる予定という。

三菱自動車などのスポンサーの獲得、テレビ放映権料や入場料の収入増により、協会は商業的な成功を収めている。協会の2017~18年シーズン報告書によると、約6万7000人収容のマレーフィールドでの代表戦は5試合ともチケットが完売。協会の収入は前シーズン比11.3%増の5720万ポンド(約82億9400万円)を記録した。

「ラグビーはビジネスとして成長しており、企業で管理職を務めるなど、ビジネス感覚を持った人が協会の経営陣の中に入っている。収益性を上げたことで、世界で一番と言われる素晴らしいコーチ、選手を迎え入れることができる」。マッケイCOOの言葉には自信がこもる。古くからの伝統を大切にする心と進取の気質を併せ持つ「国」は、W杯で初の8強進出を目指す日本代表の前に立ちはだかる。(スコットランド編は、帯津智昭が担当しました)

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