「日本 速くて賢い」元イングランド代表 ジョニー・ウィルキンソンさん

 ジョニー・ウィルキンソンさん
ジョニー・ウィルキンソンさん

ラグビー界のレジェンド、元イングランド代表SOジョニー・ウィルキンソン氏(39)が訪問先の岩手県釜石市で、読売新聞などの取材に応じた。2003年ワールドカップ(W杯)で「母国」を初優勝に導いた司令塔はキックの名手として名をはせ、15年W杯で日本代表のキッカーを務めたFB五郎丸歩にも大きな影響を与えた。東日本大震災の被災地でW杯が開催されることへの思い、W杯で8強入りを目指す日本代表の印象を語った。

6日、W杯会場の一つ、岩手県の釜石
鵜住居(うのすまい)
復興スタジアムを初めて訪れた。地元の子どもや高校生たちと交流し、キックやパスを指導した。

「市民やボランティアの熱意、一丸となって頑張る姿勢は、ラグビー選手が常に心がけていること、精神に似ている」。復旧に向けて尽力する震災直後の人々の姿に思いをはせたという。「想像を絶する被害を受けた状況から復興を進め、W杯を誘致するのに費やしたエネルギーは計り知れない。W杯を通じ、世界中の人が大きな力を受け取ることになるだろう」と、被災地が舞台となる意義を語る。

進化認め「8強の可能性」

 2003年W杯決勝の延長後半ロスタイムに劇的なドロップゴールを決めるウィルキンソンさん(手前左)=ロイター
2003年W杯決勝の延長後半ロスタイムに劇的なドロップゴールを決めるウィルキンソンさん(手前左)=ロイター

日本代表の印象については「賢く、創造性に富んでいる」と語る。「聖地」トゥイッケナム競技場で昨年11月、日本がイングランド相手に前半を終えてリードするなど善戦した試合を踏まえ、「15年W杯の日本は非常に速かったが、今はスピードに加え、試合の中で臨機応変に対応する力もある」と評価する。「W杯で8強入りの可能性はある」としたうえで、「良い内容の試合を続けることができるかが大切」と話す。

15年の前回大会で日本代表を指揮したエディー・ジョーンズ氏が監督を務めるイングランドの戦いぶりも注目される。2度目の優勝を飾るために必要なこととして、「選手一人ひとりがリーダーであること。いかなる状況でも混乱に陥ることなく対応すること」を挙げる。

豪州と戦った03年大会決勝で延長戦の終了間際に劇的なドロップゴール(DG)を決めた一戦については「私たちの体は力に満ち、感情の制御もできていた」と振り返った。(矢萩雅人)

ジョニー・ウィルキンソン
1979年5月生まれ。98年、18歳でイングランド代表デビュー。W杯は99年から4大会連続出場し、2003年大会ではイングランド初優勝の原動力となる。07年は準優勝。W杯通算277得点の最多記録を持つ。イングランドではサッカー代表のベッカムと並ぶスターだった。14年引退。イングランド代表で通算91キャップ、1179得点。身長1メートル78、体重89キロ(現役時)。

五郎丸ポーズの原点

 キックの前に両手を合わせるウィルキンソンさん(2011年)=ロイター
キックの前に両手を合わせるウィルキンソンさん(2011年)=ロイター
 前回W杯の米国戦で、キックの前に拝むようなポーズをする五郎丸
前回W杯の米国戦で、キックの前に拝むようなポーズをする五郎丸

ウィルキンソン氏はプレースキックの前に、少し体をかがめ、顔の前で両手を重ねるポーズを取った。集中力を高めるために毎回同じ動作をする「ルーチン」だ。

2015年W杯で五郎丸(ヤマハ発動機)がキックの前にしていた胸の前で両手を合わせた拝むようなポーズは、ウィルキンソン氏を参考にしたものだ。五郎丸は早大1年の時に来日したウィルキンソン氏からキックの指導を受けた。

意識の高さや集中力に衝撃を受けたといい、「本当に大きな刺激をもらった」と振り返っている。

こうした独特のルーチンを持つ世界の名キッカーは他にもいる。ウェールズ代表SOダン・ビガーは初めて出場した15年W杯で、体を小刻みに揺らして、両手で顔や肩などを触るダンスのようなルーチンで注目を集めた。

【ようこそW杯】@浦安…トップ級 夢の長期滞在

東京ディズニーリゾートの所在地として知られる千葉県浦安市が、強豪チームを迎える。羽田、成田両空港への利便性が高くホテルもそろう同市は、2015年W杯のトップ3、ニュージーランド(NZ)、豪州、南アフリカの公認キャンプ地に選ばれた。

浦安市とラグビーの関係が深まったのは、昨年4月、トップリーグのNTTコミュニケーションズが市内に本拠地を移したのがきっかけ。市と同社は相互連携・支援協力協定を結び、選手が地域のイベントに参加したり、子どもにタグラグビーを教えたりして市民と交流する。市は試合の応援ツアーを企画するなどチームのPRに力を入れている。

昨年10月の応援ツアーには、募集人数を超える約120人が参加。市の担当者は「一流のチームが拠点を置いているということで、ラグビーに対する市民の見方が変わってきた」と話す。

決勝トーナメント進出チームの公認キャンプ地にも選ばれており、世界トップ級のチームが長期間、滞在する。それらのチームと市民が交流できる場を設ける方針で、市の担当者は「長くキャンプする分、結びつきはより強くなるのではないか。浦安でコンディションを整えたチームに優勝してもらいたい」と期待している。(矢萩雅人)

主審 主将の性格を把握

ラグビーの主審は、選手と意思疎通する時、基本的に主将と話をする。選手も体をぶつけ合う中で冷静さを保てない時もあるので、「こういう反則が続いている」と先手を打って主将に注意することもある。選手が反則をよく理解していない場合、主将を通じて「何がいけないのか」ということを言わないといけない。

海外の主審は、主将の性格を考えて対応の仕方を変えている。私も最近は、「感情的になりやすい」など主将の性格を事前に把握するようになった。正しく判定することはもちろん重要だが、試合を円滑に進めるため、主将とうまくコミュニケーションを取るための準備に時間をかけている。

チームによって審判への対応に差がある。私が副審を務めた欧州6か国対抗の試合で、ある主将が感情的に対応し、主審が突っぱねたことがあった。その後、主将がプレーの切れ目に主審に水を持っていった。ちょっとした行為だが、もう一度、関係を構築できる。理解し合うことでコミュニケーションは成り立つ。

おとなしい主将もいる。主審が言ったことをチームメートに伝えているのか、疑問に思うことがある。より良い試合運びをするために、チームにとって主将選びはとても重要なのだ。(久保修平・日本ラグビー協会公認A級レフェリー)

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