残り100日 桜の覚悟

ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会は12日、9月20日の開幕まであと100日となった。これまで日本代表を支えてきたベテランたちは、集大成となるであろう大舞台に向け、強い気持ちでトレーニングに励んでいる。

田中・堀江 集大成へ

 サンウルブズで今季初先発。代表69キャップを誇る田中(4月26日)
サンウルブズで今季初先発。代表69キャップを誇る田中(4月26日)

日本の主軸として先頭に立ち、世界を相手に戦ってきた。スクラムハーフ田中史朗(34)(キヤノン)とフッカー堀江翔太(33)(パナソニック)。3度目のW杯へ向かう2人に共通するのは、日本が到達したことのない8強入りへの熱い思いだ。(矢萩雅人)

田中は身長1メートル66と小柄ながら、巧みな球さばきと判断力を武器とする。2008年に代表デビューを果たし、11年W杯ニュージーランド(NZ)大会に出場。12年にスーパーラグビー(SR)のハイランダーズ(NZ)加入が発表され、南半球最高峰リーグに挑戦する「日本人第1号」となった。15年にはリーグ優勝も経験した。同じ年のW杯イングランド大会では全4試合に先発し、歴史的3勝に貢献した。代表戦出場試合数を表すキャップ数は日本歴代5位の69に達する。

昨年の代表合宿。W杯での自らの経験を後輩たちに伝えた。「W杯は普通の大会とは違う。11年大会は勝てると思っていたが、全然違った。相手は命がけで、自分たちは中途半端な気持ちだった。15年大会は、100%必死になって準備したからあの結果になった」

同じポジションで26歳の流(サントリー)が台頭し、28歳の茂野(トヨタ自動車)もサンウルブズで経験を積んだ。田中は「W杯までに自分を磨く。全力でベスト8を目指す」と自らを鼓舞している。

 「ウルフパック」の試合でトライを決めた堀江(4月20日)
「ウルフパック」の試合でトライを決めた堀江(4月20日)

田中の1学年下の堀江は、09年に初キャップを獲得した。11年W杯後、13年にSRのレベルズ(豪)入りし、田中と同じ日にSRデビューを果たした。15年W杯で活躍し、16年にSRへ参戦したサンウルブズの初代主将に就いた。日本代表でもリーチ(東芝)が不在だった時期に主将を務めた。

FWの最前線でスクラムをコントロールし、ラインアウトでは正確に球を投げ入れる。防御の突破役を担い、パスの技術も高い。

昨年11月下旬、疲労骨折した右足の手術を受けた。W杯への影響が心配されたが、今年3月下旬に日本代表候補の特別チーム「ウルフパック」の強化試合で実戦に復帰した。その後、サンウルブズでも迫力ある突破を披露し、復活を印象付けた。

「常にW杯を頭に入れて練習している」という。8強入りの壁となるアイルランド、スコットランドとどう戦うか、イメージしながら鍛錬に励む。積み重ねてきたキャップ数は58。「このチームで勝ちたい、勝たせたいという気持ちは強い。だから何でもしたい」。その言葉から、大舞台に挑む強い覚悟が伝わってくる。

不屈の「トモさん」

 38歳で日本代表復帰を果たしたトンプソン(左から2人目、2015年10月の米国戦で)
38歳で日本代表復帰を果たしたトンプソン(左から2人目、2015年10月の米国戦で)

「トモさん」が日本代表に帰ってきた。過去3大会連続でW杯に出場したロックのトンプソンルーク(38)(近鉄)=写真=が3日、候補外から代表メンバーに抜てきされた。

1メートル96の長身を生かしてラインアウトで存在感を示し、密集にいち早く駆け寄って仲間を助ける。前回W杯後に代表引退を表明したが、ロックの人材不足から2017年のアイルランド戦で一時復帰。代表キャップ数は64を数える。今季けが人が相次いだサンウルブズに招集され、日本代表を率いるジョセフ・ヘッドコーチの目に留まった。

指揮官は「不屈の精神がある。周りの選手からも尊敬されている」とたたえる。長年の激しいプレーで鼻や足首は曲がったまま。それでも、滑らかな関西弁を操る大男は「選ばれたらうれしい」と、日本のために再び体を張る覚悟だ。(中安真人)

盛り上げ オールジャパンで W杯組織委員会 御手洗冨士夫会長

  みたらい・ふじお 1935年9月生まれ。大分県出身。中大卒業後、キヤノンカメラ(現キヤノン)入社。95年9月に社長となり、2006~10年には日本経団連会長を務めた。10年に発足したラグビーW杯日本大会組織委員会の会長に就任。20年東京五輪・パラリンピック組織委の名誉会長も務める。
みたらい・ふじお 1935年9月生まれ。大分県出身。中大卒業後、キヤノンカメラ(現キヤノン)入社。95年9月に社長となり、2006~10年には日本経団連会長を務めた。10年に発足したラグビーW杯日本大会組織委員会の会長に就任。20年東京五輪・パラリンピック組織委の名誉会長も務める。

W杯日本大会組織委員会の御手洗冨士夫会長(83)(キヤノン代表取締役会長CEO=最高経営責任者)に、大会の準備状況や期待を聞いた。(聞き手 矢萩雅人、帯津智昭)

――準備の現状は。

「省庁、自治体、企業などオールジャパンで進めてきた。大会の認知度は71・6%(4月調査)と高まり、チケット販売も非常に好調。企業からの寄付金も集まってきており、協力に感謝している。7月から開幕前に国内3か所で行われる日本代表戦で、運営、交通、警備など、本番を想定してテストする」

――日本大会の意義は。

「ラグビーは欧州や英連邦中心だった。W杯が日本に来たのは、ラグビー界から見れば、驚天動地のことだ。人口の一番多いアジアでラグビーを広めるという意味で、非常に意義がある。日本でも、子どもたちがW杯を通じてこの素晴らしいスポーツに親しみを持つようになってほしい」

――経済波及効果もある。

「インフラ(社会基盤)投資が進み、交通機関の整備も行われている。(大会組織委の昨年試算で)約4300億円の経済効果があるとされたが、今はそれ以上になると言われている。40万人と言われた訪日観戦客もチケット販売から、50万人ぐらい期待できる。全国12か所で48試合があり、公認キャンプ地を含め、地方に大きな経済効果をもたらすだろう。9月20日から11月2日まで長期間の大会のため、訪日客はラグビー観戦に加え、各地を観光する。東京五輪と比べ、日本をより広く知ってもらえる。オールジャパンで、全国的な国際交流や経済効果、子どもたちへの普及という意味で、非常にスケールの大きな大会だ」

――ラグビーの魅力は。

「品位、情熱、結束、規律、尊重という理念がはっきりしている。『ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン』というチームワークの考え方もある。選手たちは鍛錬した上で、それぞれの役割を忠実に果たし、全身全霊でぶつかり合う。終わったらノーサイドといって敵も味方もなく、互いに握手して、たたえ合う。人間形成に非常に役に立つスポーツだと思っている」

「私は中学時代に野球をやっていた。9人のチームワークで3年間を過ごし、人生にかなり影響している。スポーツは良いもの。いろいろな国の人たちが、同じルールで競う。そして勝者をたたえる。これは国々や人類の多様性を認めることだ」

――大会までの課題は。

「まだ盛り上げが足りない地域がある。今後の100日間で、重点的にやっていく。何より日本代表のチーム強化を進め、8強に入ってほしい」

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