ニュージーランド<中>マオリの誇り 胸に

イーデンパークの外周に立つマオリの神の像

 2011年ラグビー・ワールドカップ(W杯)ニュージーランド(NZ)大会で決勝の舞台となったイーデンパークの外周には、先住民族マオリが信仰する「森」「風・天気」「平和」「戦い」という四つの神の像が立つ。NZ最大の都市、オークランドの中心部からほど近い住宅街にある約5万人収容のスタジアムを、静かに見守っている。
 1840年に 英国の植民地となったNZには、多くの移民がやってきた。2013年の統計調査では、民族構成は欧州系が74%(約297万人)、マオリ系は14.9%(約60万人)。イーデンパークの観光ガイドを務めるクリス・ロージーさん(73)は「英国とマオリの文化が混ざったものが、NZの文化。10年に改修した際、マオリのことを理解してもらうために神の像を建てた」と話す。ロージーさんもマオリの子孫といい、「マオリはみんな家族だ」と笑う。
 1947年に独立し、英連邦に加盟しているNZにあって、マオリの伝統文化は、特にラグビーで色濃く残る。有名なのは、NZ代表オールブラックスが試合前に自らを鼓舞するマオリ伝統の踊り「ハカ」だ。2種類あり、どちらもマオリ語で叫び、手で体をたたき、足で地面を踏みならす。「カマテ(私は死ぬ)、カマテ、カオラ(私は生きる)、カオラ」という叫びから始まる「カマテ」は1900年代から続いており、2005年からは重要な試合で新しい「カパオパンゴ」を踊るようになった。
 NZ代表で最多148キャップを誇る元主将のリッチー・マコウ氏は「NZ人として自分たちが何者であるか、背景や文化を表現する一つの形がハカ。国歌斉唱と同じような気持ちで、誇りを持ち、自分たちが何者であるかを意識しながら踊る」と解説する。

先住民族マオリについて説明するイーデンパークの観光ガイド、ロージーさん

  ジャージーの左胸にあるエンブレムは、NZに自生するシダの一種「シルバー・ファーン」を表している。葉の裏側が緑ではなく銀色なのが特徴。マオリの信仰の対象で、かつてはシルバー・ファーンを裏返しにして地面に置き、月明かりを反射させて道しるべとして利用したという。NZラグビー協会の競技部門責任者、ナイジェル・キャス氏が「シルバー・ファーンはマオリの重要な文化で、NZでは多くのスポーツのシンボルだ」と語るように、NZオリンピック委員会のロゴにも使われている。
 2016年3月、英国旗ユニオンジャックと赤い南十字星を配した国旗が隣国・豪州の国旗と似ているとして、国旗変更の是非を問う国民投票が実施された。投票の結果、現国旗が支持されて変更は見送られたが、新しい国旗のデザイン案はシルバー・ファーンを描いたものだった。マオリの精神を胸に、オールブラックスは戦っている。

機体にシルバー・ファーンが描かれているニュージーランド航空の飛行機(いずれも3月、NZオークランドで)

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