オーストラリア<上>「15人制」人気伸び悩み

空席が目立つワラタス―サンウルブズ戦のスタジアム

約3万人収容のスタジアムは空席が目立った。3月29日、シドニーから電車で約3時間のニューカッスル。スーパーラグビー(SR)の日本チーム、サンウルブズを迎えたワラタスの広報担当者は、それでも前向きだった。「本拠地のシドニーでも観客は1万2500~1万5000人。きょうは約1万2600人来てくれた。素晴らしいことだ」

豪州では1863年、欧州以外では初めてとなるラグビーのクラブが設立された。「ワラビーズ」の愛称を持つ代表チームは過去8度のワールドカップ(W杯)で2度頂点に立ち、準優勝も2回と、強豪国として知られる。しかし、豪州国内では思いの外、影が薄い。

人口約2500万人の豪州には、四つのフットボールが存在する。日本で一般的な15人制ラグビーの「ユニオン」のほか、豪州独自のオーストラリアン・フットボール(オージーボール)、13人制のラグビーリーグ、そしてサッカーだ。

楕円(だえん)球を扱う競技では、キックを中心に球を運ぶオージーボールの人気が最も高く、特にメルボルン周辺で盛んだ。次が13人制ラグビーリーグ。攻撃側が6度タックルを受けると、攻守が入れ替わるほか、密集でのボール争奪戦がなく、スピーディーな展開を特徴としている。

国際舞台 勝てば「注目」

ユニオン(15人制)を統括する豪州ラグビー協会のレイリーン・キャッスル最高経営責任者(CEO)は「人口が少ない割に、様々なプロスポーツがあり競争は激しい。ユニオンは非常に難しい状況にある」と認める。ユニオンは長くアマチュア主義を守り、プロが認められたのは1995年になってから。豪州のスポーツ事情に詳しい一橋大の尾崎正峰教授(スポーツ社会学)は「オージーボール、ラグビーリーグは早くからプロとして活動し、メディアとの関係も深い。プロ化で出遅れたユニオンが追いつくのは厳しい」と話す。

キャッスルCEOはユニオンの強みとして「国際性」を挙げる。オージーボール、ラグビーリーグは国内で絶大な人気を誇る一方、世界的認知度は低い。「ワラビーズが世界で戦っている意義は大きい。W杯では多くの国民が応援してくれる」と、国際性を強調する。

豪州代表は2015年W杯で準優勝した後、成績がふるわない。さらに5月、絶対的エースのFBイズラエル・フォラウがインスタグラムに差別的なメッセージを投稿して協会から契約を解除された。

1999年W杯優勝時の主将、ジョン・イールズさん(49)は言う。「ワラビーズが勝つことで、将来、競技を支えるだろう子どもたちがラグビーにより注目する。日本大会でどのような結果を残せるかが、ユニオンにとって非常に大きい」。今回の前評判は高くないワラビーズが、国内での競技発展の鍵を握っている。

「ユニオン」を統括する豪州ラグビー協会

 

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