フィジー<下>飛ばずとも 「過去最強」

バイさんのアカデミーで練習する子供たち(スバで)

1950年代、フィジーに伝説の名選手がいた。ジョセファ・レブラ。陸上競技の短距離でも活躍したスピードを武器に、ニュージーランド(NZ)先住民族マオリの代表チーム「マオリ・オールブラックス」や豪州などの強豪から次々とトライを奪った。「フライング・フィジアン(空飛ぶフィジー人)」というこの名手の異名が、15人制代表チームの愛称となっている。

フィジーの特徴はスピードに加え、タックルを受けながらパスをつないだり、自分の股の間を通したり変幻自在のパスワークだ。時には攻める方向と違う方へ走る予測不能な動きも相手を惑わせる。「フィジアン・マジック」と呼ばれるゆえんでもあり、その力は世界最強と呼ばれる7人制で存分に発揮されている。

「マジック」の源流は、平日の夕方に見られる。至る所で遊びのラグビーが始まり、子どもも大人も鬼ごっこのように体をくねらせて、相手をかわす。

15人制のワールドカップ(W杯)では2度 の8強が最高だ。2011年、15年はともにグループリーグで敗退した。各チームの組織防御が進み、7人制よりもスペースが狭い15人制では「マジック」を自由に発揮できなくなった。

スクラム重視 組織力進化

チームの仕上がりについて答えるマッキー監督(スバで)

だが就任6年目を迎えたNZ出身のジョン・マッキー監督が率いる現チームは、昨秋にフランスを破るなど「過去最強」と呼ばれる。

指揮官の強化策は明快だ。「かつてはバックスが主役だった。でも今は違う」と、軽視されてきたスクラムやラインアウトに注力した。互いの陣形が整わない中での奔放な攻めを得意としてきたが、今はセットプレーからの組織的な攻撃に磨きをかける。

かつてのラグビーとは一線を画す姿に、寂しさを感じるファンもいる。ただ元代表CTBのセレマイア・バイさん(40)は「自由なラグビーが楽しいのは真実だ。ただ、勝たなければ喜ばせることはできない」ときっぱりと言う。11年W杯で苦汁をなめた経験から、今は小学生のアカデミーでタックルやスクラムの基本動作といった「自分がしてこなかったこと」を教え込んでいる。

もう一つ、セットプレーを強化する理由がある。バイさんは「かつてのスタイルは80分間走りっぱなし。今は陣形を整え、体力の消耗を抑えながら戦うことができている」と指摘する。マッキー監督が目指す「スマートなラグビー」に通じる部分だ。

先月13日、マオリ・オールブラックスから62年ぶりに白星を挙げた。レブラの3トライで勝利して以来の快挙だ。FW戦で後手を踏まず、BK陣は華麗なパスとパワフルな走りで相手防御を突破した。FWとBKが一体となった新しい「フライング・フィジアンズ」。本大会での飛躍を狙っている。(フィジー編は、中安真人が担当しました。写真も)

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