守りで日本は自信を得たはず~大久保直弥さんのアメリカ戦解説

ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会の行方を占う日本代表とアメリカ代表のテストマッチが10日、フィジーで行われ、日本が34―20で快勝した。元日本代表で、サンウルブズコーチの大久保直弥さん(43)は「ディフェンス面で収穫の大きい勝利」。大久保さんの実況解説をつなぎ合わせて、試合を振り返る。(聞き手・込山駿)

米国の突進を阻む日本のフォワード陣

試合前

フィジー、トンガを破ってきた最近2試合、ジャパンの選手たちは、相当手応えを感じているはずだ。厳しい宮崎合宿でやってきたプレーが出せている。トンガの巨漢を2人がかりのタックルで押し返した。フィジー戦は、相手の特徴を見極めて攻撃の組み立てからキックを減らした判断が光った。

相手のアメリカは、当たりが強くて体も大きく、堅実なラグビーをするチームだ。体力的には、日本がW杯で対戦する強豪アイルランドやスコットランドに劣らない。この相手に、日本が、スペースにボールを運んでリズムに乗るラグビーを見せられるかが、焦点だ。

特に、フルバックに入る山中に期待したい。神戸製鋼の昨季トップリーグ優勝に大きく貢献した選手で、私がコーチを務めるスーパーラグビーのサンウルブズでも、ハイボールの処理や周囲と意思疎通をとる能力で、際立ったものを発揮した。トライにつながる連係に彼が絡む場面が見たい。

前半

最初のラインアウトは、用意した通りのプレー。おとりの選手を使って、裏をバックスが走った。相手が完全につられた訳ではないが、きっちり体を当てられていた。そのリズムから、うまく攻撃を組み立てて、モールからの先制トライが生まれた。モールでは、最初の3人がしっかり立ってボールをキープできたのが良かった。

アメリカの大柄なフォワード陣は、前に出ると強い。反面、スペースに蹴り込まれて背走すると、どんどん消耗する。日本はクイックスローから、相手の弱点をうまく突いて追加点のペナルティーゴールを得られた。

トライを取れる足の速い選手に、どれだけいい形でボールを回せるか。ラグビーの勝敗は、かなりの部分まで、そこで決まる。日本の2つ目のトライは、まさにその形。松島が走り、内に切り返した福岡が抜けて決めた。こういう場面を、何度も見たい。

アメリカも、やはり対人プレーは強い。1対1でタックルに行くと、日本は前進を許している。アメリカの最初のトライは、そのパターン。日本の防御は、内側の選手の動きに、やや鈍さがあった。そこを突かれての失点だ。その後の、この試合最初のスクラムを見ると、スクラムの力は互角だろう。

20分過ぎくらいから、日本が少し嫌な雰囲気になってきた。最初に2本、あまりにもきれいにトライを取れた。こういう時、「いつでも取れるぞ」という雰囲気になりやすい。ミスや反則で相手にボールを渡す場面が増えて、追い上げを許した。こうなると、相手の大きなフォワード陣がどんどん元気になる。主導権を奪い返したい。

1トライ1ゴールで並ばれる7点リードで前半終了。福岡がインゴールに飛び込んでボールが手の間をすり抜けた場面が、日本としては惜しかった。汗でボールが滑るのだろうか、両チームとも落球が目立つ。福岡に決定機をもたらした、ラファエレティモシーが相手ディフェンスラインの裏を突いた左足のキックは、彼の良さが出たプレーだ。

トライにつながった松島(中央)と福岡(右)の鮮やかな連係プレー

後半

後半最初のトライを、注目していた山中が決めた。そこまでに、フォワードがしっかりボールをキープし、相手を振り回していたのが効いた。これを継続したい。

スクラムで、日本が押せそうな雰囲気が、前半の終わり頃から漂ってきた。日本の方が低く組めている。アメリカは消耗して姿勢が高くなってきたし、ミスも増えてきた。交代でスクラムハーフに入った流が、スクラムからいい球出しをする場面を見たい。

キックの蹴り合いから、日本が鮮やかな速攻でトライを奪った。山中が見事に密集を抜け出して長い距離を走り、追走した流、堀江とボールをつないで、最後は主将のリーチが決めた。アメリカの消耗が浮き彫りになった場面でもある。

60分前後から、日本のボール回しの速さとテンポに、アメリカがついて来られなくなってきた。こういう展開に、ワールドカップでも持ち込みたい。それにしても、福岡がライン際で快走した場面は、うっとりした。惜しくもライン外に出て、トライにならなかったが、あそこでキックを交えて2人抜けるのは、相当の速さだ。

日本ボールのスクラムから、アメリカがボールを奪ってトライ。日本は、スクラム前列の右側の体勢が浮いたところを突かれた。踏ん張りどころに差し掛かった。終盤、反則をせずに、粘り強く守り抜けるか。

フォワードの選手というのは、スクラムで押されると、勝っても勝った気がしないもの。その点で、最後に攻め込まれた場面を、集中力あるディフェンスでしのぎ切って試合を終えられたのは大きい。勝利の後味が違う。最後、アメリカのボールを奪ったムーアのタックルは素晴らしかった。彼は80分間、実によく動いた。

終了直後

34―20は、日本の快勝と言える。前後半の最初という、スコアが動きやすい時間帯に、しっかりトライを奪えた。注目した山中も、最初のうちは硬さが目立ってミスが出たが、後半に入ってトライと突破で見せ場をつくった。チームとしては、むしろ守りの面の収穫が大きい。前半の20分以降や、後半残り約10分といった相手ペースの時間帯に、集中力を切らさずに守り、失点を少なく抑えられた。W杯に向け、自信になるだろう。

解説者・大久保直弥(おおくぼ・なおや)さん

大久保直弥氏

スーパーラグビーのサンウルブズ(日本)でコーチを務める。トップリーグ・サントリーの監督も経験。現役時代のポジションはロックかフランカーで、1999年と2003年のW杯に出場した。1975年9月27日、神奈川県出身。身長1メートル88。

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