サモア~「薄給」 代表招集に打撃

国内組の中心として期待されるバイリ(左から2人目)(アピアで)

サモアの首都アピアにあるラグビー協会の一室で、ビンセント・フェプリアイ最高経営責任者(CEO)は、額に大粒の汗を浮かべながらため息を漏らした。「我々にはお金がない。スタッフも少なく、試合の準備でグラウンドに旗を立てるのは私の役目なんだ」。会話の途中で止まったエアコンを指さし、「これも節約のため」と苦笑した。

人口約20万人の小国は、西サモア時代を含めてワールドカップ(W杯)に第2回から全て出場。身体能力の高さを武器とし、2度8強入りした。1999年大会では日本に圧勝し、強豪ウェールズも破って世界を驚かせた。相手が強ければ強いほど底力を発揮するのがサモアの魅力だ。

ただ、前回大会で日本に5―26で完敗するなど、近年は力が落ちている。ニュージーランドとサモアの両代表で巨漢WTBとして活躍したバイガ・トゥイガマラさん(49)は「当時は国の誇りをかけて戦ったからこそ、強敵に勝つことができた。でも今はお金の問題ばかりが目立つ」と嘆く。

フェプリアイCEO

協会の財政難は深刻だ。95年のプロ解禁以降、高給を求めて海を渡る選手は増えたが、自国の強化にはつながっていない。フェプリアイCEOは「我々が高い出場給を払えなければ、高額な給料をもらっている欧州クラブから選手を呼ぶことは難しい」と話す。代表戦でけがをした際の補償が十分でなければ、クラブも代表へ選手を派遣することをためらうという。

2017年のイングランド戦では選手へ出場給を満足に払えず、サモア出身のイングランド代表選手が募金を呼びかける動きまで起きた。全国紙「サモアオブザーバー」のトーマス・エイリー記者によると、この一戦のサモア代表の出場給は、イングランド代表の30分の1だったという。

再興へ 闘志燃やす「国内組」

財政難の原因について協会関係者は「大企業が国内になく、大口のスポンサーが見つからないこと」と口をそろえる。ただエイリー記者は、「政府関係者が協会の要職を占め、収益の一部で私腹を肥やしている人もいる」と指摘する。17年には国際統括団体ワールドラグビーが協会のガバナンス(統治)を問題視した。

開催中のパシフィック・ネーションズ杯(PNC)の代表選考では、協会スタッフが「海外組」約60人に片っ端から電話をかけた。だが主力数人を呼ぶことができず、W杯へ向けたチームの熟成が進んでいない。

それでも「国内組」のWTBジョニー・バイリは「W杯では魂を込めて戦う」と、打倒・日本へ闘志を燃やす。気概ある選手は今のチームにもいる。加えてフェプリアイCEOは「W杯での活躍で海外スポンサーがついてほしい」と期待する。そんな思惑も、思わぬ力を呼ぶかもしれない。(中安真人、写真も)

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