トンガ<上>楕円球 団結の象徴

13人制ラグビーの代表チームを応援するトンガ国民(ヌクアロファで)=中安真人撮影

6月22日、トンガの首都ヌクアロファ中心部は真っ赤に染まった。13人制ラグビーのトンガ代表がニュージーランド(NZ)代表と敵地で戦う夜の試合へ向け、赤を主体とする国旗や赤い塗料で装飾した車に乗った人々が午前中から街を埋め尽くした。

トンガは国土面積が長崎・対馬とほぼ同じ約720平方キロ・メートルで、人口約10万人の島国だ。ラグビーは15人制、13人制ともに国民的スポーツ。2017年の13人制W杯では会場近くのNZの空港に、代表を出迎えようと5000人が集まったという。今月3日の日本戦でも、トンガのジャージーを着たファンが大阪・花園ラグビー場で声援を送った。

世界中にファンがいる理由は、国が抱える事情からだ。基幹産業がなく、日本の外務省によると、海外で暮らすトンガ出身者の送金と他国からの援助に大きく依存しているという。若者は家族を養うために国を出る。1人の女性が生涯に産む子供の推計人数を示す合計特殊出生率は約3.6(16年)と高いのに人口はほぼ変わらないことが、海を渡る人の多さを物語る。

離散する社会をつなぎとめるのが楕円(だえん)球だ。スポーツ省スポーツ振興担当役員のツイバイタ・ウエレニさんは「ラグビーは国の団結の象徴だ」と話す。日本やNZなど様々な国で、トンガにルーツを持つ選手がプレーする。トンガ協会のフェアオ・ブニポラ副会長の2人の息子は、イングランド代表選手だ。

海外の「同胞」にもエール

海外で暮らす人は母国を応援し、国内では海外の代表チームで活躍する同胞に声をからす。「みんな生活のために国を出る。どこのチームであろうとトンガの選手に声援を送ることで、自分がトンガ人であることを思い起こさせてくれる」とウエレニさんは語る。

実は15人制の代表は弱体化しつつある。高額な報酬を得るため有望な選手は高校卒業までに海外へ出て、そのまま現地の代表になるからだ。協会はこの事象を気に留めてこなかったが、17年W杯で4強入りした13人制代表チームの躍進が契機となり、意識が変わり始めた。

13人制は15人制と違い、他国・地域の代表になっても、国籍がある国の代表になれる基準が緩い。W杯ではNZ代表などで活躍した選手がこぞってトンガ代表に戻り、「マテ・マ・トンガ(トンガのために命を尽くせ)」というチームの愛称通りにプレーする姿に、国民は心をつかまれた。

有望な若い人材が海外へ出て行くのはこの国の宿命だ。15人制強化のためには国内選手を育てるしかないが、資金難もあり、育成システムは作れずにいる。

13人制のNZ戦を店頭のテレビで見ていたアナ・マイレさん(25)は「詳しい規定はわからないけど、15人制も海外の選手を戻せばいいんじゃないの」と話す。若い女性の純粋なひと言は、「人材供出国」が抱える悩みを浮き彫りにした。

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