[桜の戦士]リーチマイケル(30)多国籍ジャパン 束ねる主将

フィジー戦に出場したリーチ(7月27日)=伊藤紘二撮影

屈強な男たちを前に、ラグビー日本代表の主将、リーチマイケル(30)(東芝)は「教壇」に立った。7月29日、トンガ戦を控えた堺市内のホテルでの一幕だ。リーチは日本語で、チームメートに語りかけた。

テーマは日本代表としてワールドカップ(W杯)に3大会連続出場したトンガ出身のラトゥウィリアム志南利(しなり)さん(53)について。日本がトンガと戦う時、いつもの闘争心を母国相手でも出せるのか、当時の日本代表監督は案じた。だが、ラトゥさんはそんな心配をよそに大活躍したという逸話をトンガ出身者も多いチームに披露した。

日本史について話したこともある。江戸時代の鎖国を紹介し、「開国後、海外から文化を取り入れることで日本は大国になった。俺たちもいろいろな国が混ざり合って強くなれる」と呼びかけた。

15歳でニュージーランドから来日した。母国での年数と同じ時間を日本で過ごし、日本国籍も取った。日本出身者と外国出身者、その両者の考えがよくわかる。ラグビーは条件を満たせば国籍に縛られずに代表資格が得られ、日本代表でも海外出身者が約4割を占める。「日本のことを知ることでチームはまとまる」。日本を深く愛する骨太の主将が代表の中心にいる。

強豪フィジーを破った後、記念写真におさまるリーチ(前列中央)ら日本代表選手たち(7月27日)=浦上太介撮影

来日15年 心もタフに

6月、リーチマイケルは宮崎合宿の練習後、一人でファンへ約1時間もサインを続けた。ひげを生やしたワイルドな見た目とは裏腹の優しさものぞかせた。気弱だった少年は日本で育ち、今や、日本代表を率いるジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)から「天性のリーダー」と評される。日本でのワールドカップ(W杯)へかける思いは人一倍、強い。

15歳の時、ニュージーランド(NZ)から札幌山の手高(北海道)に留学した。細身の少年は、責任感の塊でもあった。大阪・花園で開かれた全国高校大会に1年生で出場。トンガ人留学生擁する相手に大敗し、「同じ留学生なのに自分はチームの役に立てていない」。ラグビー選手として成長するきっかけだった。バターを塗ったトーストを寝る前に8枚食べるなどして体重を増やし、筋力トレーニングを繰り返した。

W杯初出場は2011年NZ大会。全試合に先発するも1分け3敗に終わり、「強い日本を母国の人に見せられなかった」と悔やんだ。W杯直前の「パシフィック・ネーションズ杯」(PNC)で優勝したことが過信になったと感じた。

14年4月、初めて主将に指名された時には不安があった。「外国人が多いチームという批判があるのに、自分が主将になっていいものか」。加えて、当時のエディー・ジョーンズHCの厳しい要求にも音を上げそうになっていた。

同年秋の欧州遠征中、岩渕健輔ゼネラルマネジャー(当時)から、「主将がエディーと対等に話せるようにならないと、チームはこれ以上成長しない」と指摘された。「でも何を言っても言い返されるから」。まだ、主将として独り立ちはできていなかった。

15年、南半球最高峰リーグ「スーパーラグビー」のチーフス(NZ)加入が転機となった。チームの主将が誰よりも激しく練習し、指揮官にも意見をするのを見て、その姿を目標とした。同年のW杯イングランド大会、南アフリカ戦の終盤、ジョーンズHCの意に反して決断したスクラムの選択は、主将として一皮むけた証しだった。

W杯後の充電期間を経て、17年5月に代表へ復帰し、10月に主将の座に戻った。「今回はやりたかった」。自国開催の大舞台で先頭に立つ覚悟はできていた。

今、最も注力しているのは「小さな声を聞く」こと。昨秋の欧州遠征で強豪イングランドに善戦した後、格下ロシアに苦戦した。ロシア戦前の選手の会話で気の緩みを感じ、「潜在意識から厳しく鍛えないといけない」と感じた。

 

日本の歴史を伝える講義も、この時の経験からだ。「日本のために戦う」という意識を、来日して日の浅い外国出身選手に植え付ける目的があった。昨年の合宿中には自らも含め、11年のW杯に出た選手に経験談を語ってもらう場を設けた。

今月10日、チームはPNCで優勝した。それでも主将は「変な自信になると良くない。11年みたいになる可能性がある。W杯はまた違う」と冷静だ。世界一流のプレーだけではなく、精神面でも日本代表を支えている。(中安真人)

代表資格> 国際統括団体ワールドラグビーの規定で、①その国・地域で出生 ②両親または祖父母のうち1人がその国・地域生まれ ③直前の3年間継続居住 ④通算10年居住――のうち一つを満たせば、代表資格を取得できる。国籍は条件ではないが、他の国・地域での代表戦出場がないことが前提となる。

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