トンガ<下>海外へ「成功のため」

視察する河瀬総監督(左奥)(トンガカレッジで)=中安真人撮影

高校の試合 スカウト集結

日本の高校野球と同じように、トンガの高校ラグビーは各学校を挙げての一大イベントだ。6月下旬のよく晴れた金曜日。首都ヌクアロファ郊外にある中高一貫公立校「トンガカレッジ」で、同校など4校による対校戦が開催された。この時期は毎週金曜日に試合が組まれ、授業は午前中で終わるため、生徒が応援に駆けつける。

その様子をグラウンド脇で熱心に見ていたのが、元日本代表で摂南大の河瀬泰治総監督だ。勧誘のため、事前にビデオでチェックした選手を視察した。翌日もクラブチームの試合を訪れ、お目当てのフランカーを見ながら「ふくらはぎの太さや足首の締まりはさすがだ」と評価した。多数の関係者がスカウトに現れるのはこの時期の風物詩だ。

トンガでは「ラグビーは成功者への道筋」と言われる。海外で活躍すれば自国以上の給料が手に入る。トンガ協会のフェアオ・ブニポラ副会長は「ラグビーで生活できることがわかり、更に人気が出た」という。

毎年9月にニュージーランド(NZ)で、トンガの高校生らを集めたチームと現地クラブの試合が行われ、NZや豪州からスカウトが集まる。遠征費の約6割は国費。国が関与する「品評会」とも言え、スポーツ省スポーツ振興担当役員のツイバイタ・ウエレニさんは「海外でプレーして国内に送金してもらいたい。彼らへの投資だ」と言い切る。

日本も渡航先の一つ。1980年代に大東大が留学生を受け入れて以降、結びつきが強まった。

トンガを含むポリネシア地域の人々はかつて、台湾周辺から長い航海の末に住み着いたために骨格の大きい人が生き残り、骨太で筋肉質という特徴を受け継いできたとの説もある。このためトンガ出身選手は当たりが強くて突破役として輝く。今年の日本代表にもアマナキ・レレイ・マフィ(NTTコミュニケーションズ)ら5人の出身者がいる。

トンガカレッジのティモテ・パヤさん(13)は日本留学を希望する。父マイコロさん(41)は離島出身のラガーマン。家計が苦しく競技はあきらめたが、親友は後に日本代表となり、母国にも大きな家を建てた。マイコロさんは「息子にも海外でチャンスをつかんでほしい」と話す。

ティモテさんは「大学に行けるのが日本の魅力」と話す。若くしてNZや豪州に渡ってラグビーをするのはクラブの下部組織が多く、高校をやめて働きながらプレーする。トップチームに上がれず、国に戻っても学歴がなくて仕事がままならない例もある。日本なら大学卒業の経歴が得られるため、日本で学んだ後に母国で公務員になる人もいる。ラグビーの魅力をティモテさんは「お金をたくさん稼げること」と屈託なく答える。楕円(だえん)球を取り巻く環境は様々だ。(トンガ編は、中安真人が担当しました)(オセアニア編おわり)

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