[桜の戦士]稲垣啓太(29)頼れる 不屈の「1番」

スクラムの最前線で相手と対峙(たいじ)し、豊富な運動量で仲間のために体を張る。激しいタックルを武器とする29歳の左プロップは、日本代表に欠かせない存在だ。

米国戦(8月10日)、果敢に突進する稲垣=伊藤紘二撮影

献身的なプレーの原点は、新潟工高時代にある。中学時代は野球部で将来を有望視されており、本格的にラグビーを始めたのは高校に入学してから。入学時に身長は1メートル80を超え、体重も120キロ以上。存在感は際立っていた。同高の樋口猛監督は「すごくでかかった。でも動けた。器用で性格も素直。こういう子が伸びると思った」と振り返る。

恩師から将来は日本代表選手になることも期待されたが、特別扱いはされなかった。相手を止める低いタックル、倒れたら素早く立ち上がるといった基本を徹底的にたたき込まれた。

その後、高校生ながらU20(20歳以下)日本代表に選ばれた。順風満帆だったわけではなく、主将を務めた関東学院大では2部リーグ降格も経験した。

2014年2月にトップリーグの新人賞に輝き、11月に日本代表デビュー。前回のワールドカップ(W杯)で南アフリカ撃破など歴史的3勝に貢献し、スーパーラグビーのレベルズ(豪)でのプレーも経験した。

「倒れてから起きて次のプレーに向かう早さとか、立ち上がってからの動き出しの早さが特長と言われるが、それは才能でなく、意識の問題」と稲垣は話す。

試合後は映像を見返し、自分のプレーを細かくチェック。気づいた点は書き留め、改善すべき点を頭の中で整理できたら次の試合の準備に進む。「次にどういうことをしなければいけないのか目標をしっかり設定して動かないと、過去の人間になってしまう。目標を設定するためにも振り返りは大事」。常に成長を目指す向上心がプレーを支えている。

日本代表で同じポジションで5歳下の三浦昌悟(トヨタ自動車)が「人一倍ハードワークし続ける姿、ミーティングの内容を理解し、他の選手に落とし込もうとする姿を尊敬している」と語るように、仲間や首脳陣からの信頼は厚い。

日本がパシフィック・ネーションズ杯優勝を決めた10日の米国戦でも、スクラムに、ボール争奪戦に、大柄な相手に奮闘した。

「ラグビーは15人でやる競技だが、結局は個の能力の集合体。だから個人の能力を上げる必要があると前回のW杯で感じたし、それをみんなが理解して4年間積み上げ、チームとしての完成度も高まっている」。厳しい自己鍛錬に励む男の言葉だからこそ、説得力がある。(矢萩雅人)

 

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