[桜の戦士]松島幸太朗(26)天賦の走力 南アで磨く

トンガ戦で豪快なトライを見せる松島(2019年8月3日、川崎公太撮影)

そのトライは、高校ラグビー界では「伝説」とまで称される。桐蔭学園高(神奈川)3年だった2011年1月、全国高校大会準決勝での100メートル独走トライだ。自陣ゴールライン手前でこぼれ球を拾い、一気に加速。22メートルライン付近で相手を片手ではじき飛ばすと、誰にも追いつかれず、グラウンドの端から端まで走りきった。日本代表の主力になった今、自らのトライを「このレベルでできたら、すごいですね」と笑う。

球を持たずとも、抜群の走力でファンを魅了する。今年7月のフィジー戦。こぼれ球に反応して球を蹴った。相手と競り合いながら、ドリブルでインゴールまで運び、トライを決めた。「ランやステップワークは一番見てもらいたい」と自身の強みを語る。

南アフリカの首都プレトリアで、ジンバブエ人の父(故人)と日本人の母の間に生まれた。主に日本で育ったが、代表までの道のりは異色だ。高校卒業後は大学に進まず、南アでの武者修行を選んだ。スーパーラグビーのシャークスの育成組織で2年余り鍛えられた。「海外で試合をする時でも、相手に対する恐怖心はあまりない。慣れている部分がある。成長できた場となったので、その決断は良かったと思っている」

南ア行きを支援した一人が、桐蔭学園高の藤原秀之監督(51)だ。中学3年当時の映像を初めて見た時、「バネ、走力、一瞬のスピード。すごい選手になると思った」。その想像は現実となる。ラグビーでは生まれた国の代表資格を取ることができる。シャークスの育成組織時代に南アのU20(20歳以下)代表候補に挙がった際、将来はワールドカップ(W杯)優勝2度を誇る南ア代表になれるのではないか――。藤原監督らは真剣に考えたという。

ただ、候補合宿への参加は辞退した。「(U20の南ア)代表に選ばれたら、どうするんですか」と心配していた様子を藤原監督は覚えている。U20南ア代表になれば、日本代表の夢は絶たれるからだ。日の丸を背負うことへの思いは強かった。

2014年5月、21歳で日本代表デビューを果たすと、15年W杯は全4試合にフル出場。南アを破る大金星を含む3勝に貢献した。2度目のW杯となる日本大会で、「名前を世界中に広めたいし、自分が良いプレーヤーであることをしっかり証明したい。絶対に活躍したい」。高校時代のような記憶に残るプレーを見せる自信があるからこその言葉だろう。(帯津智昭)

フィジーの守りを突破する松島(2019年7月27日、伊藤紘二撮影)

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