[桜の戦士]福岡堅樹(26)最後の舞台 全力突破

パシフィック・ネーションズ杯のアメリカ戦でトライを決める福岡(2019年8月10日、伊藤紘二撮影)

ワールドカップ(W杯)は最後だと決めている。ラグビーも、来年の東京五輪の7人制が終わると第一線から退くつもりだ。小さい頃からの夢である医師の道を目指すためだ。アスリートとして脂の乗る時期にもかかわらず、「惜しまれながら引退する方がいいじゃないですか」とあっさり笑う。

もともとラグビーは高校で終える予定だった。両膝の靱帯を損傷するなどけがが多く、治療で出会った整形外科医に影響を受けて医師への憧れが深まり、医学部を目指した。現役合格はかなわず、ラグビーへの未練も断ち切れなかった。1浪して筑波大へ入学し、再び楕円球を手に取った。

瞬間的な速さは当時から世界トップクラス。球を持てば猫のように背を丸めて一気に加速し、防御ラインを突破する。大学2年時の2013年にエディー・ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチ(HC)に抜てきされて代表入りしたが、指揮官からは「もっとハードワークできればW杯でスターになれる」と、スピード以外を磨くように指摘された。

課題を克服できないまま迎えた15年の前回W杯では、大敗したスコットランド戦のみの出場に終わり、「何も貢献できなかった」。翌年、リオデジャネイロ五輪の7人制代表を経験したことが転機となった。15人制に比べて短い距離を全速力で走る回数が多い7人制の試合を数多くこなし、自然と体力がついた。「1本走れば10分間(試合から)消える」と言われた男が「ここぞの場面で走れるようになった」と変化を実感する。

成長を示したのが昨年11月のイングランド戦だ。前半、スペースへ味方が蹴った球を持ち前のスピードで拾って前進し、最後はリーチマイケル(東芝)のトライに結びついた。キックを多用する現代表の戦い方では、味方のキックを追いかける「キックチェイス」は重要なプレー。ハイボールの捕球も含め、球を持たない局面でも仕事量の多さを見せ、敵将となったジョーンズ監督から日本語で「ケンキ(堅樹)はいい選手」と称賛の言葉をもらった。

過去にはこだわらない性格だが「あえて挫折を挙げるなら」と問われると、受験の失敗と15年のスコットランド戦と答える。ただ、この二つの出来事がなければ今の姿はなかったのも事実。今夏のパシフィック・ネーションズ杯ではチームで唯一、全3戦でトライを挙げ、ウィングとしての存在感はますます高まっている。

今大会、日本はグループリーグ最終戦でスコットランドと対戦する。「4年前と同じなら意味がない。勢いを与えるプレーを見せたい」。輝きを増したスピードスターが日本を8強へと導く。(中安真人)

パスを受け、抜け出す福岡(2019年8月10日、伊藤紘二撮影)

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