ラグビーワールドカップ…「伝統国頼み」脱却、アジア振興に熱い視線

ロンドン郊外で行われたイングランド対アイルランド戦。8万2000人収容のスタンドは超満員だった=ロイター

8月24日、ロンドン郊外のトゥイッケナム競技場で行われたラグビーのイングランド―アイルランド戦。22億6700万ポンド(約2940億円)の経済効果を生み出した2015年ラグビー・ワールドカップ(W杯)イングランド大会で決勝の舞台となった「聖地」には、W杯仕様のジャージーを着たファンがあふれ、2019年日本大会のグッズ売り場に長い列ができていた。

1987年に第1回大会が行われたW杯は、32年間で大きく発展した。2015年大会のチケット販売は247万枚、テレビ視聴者数は40億人で、海外から訪れた観光客約40万人の消費総額9億5800万ポンド(約1240億円)は、2012年ロンドン五輪・パラリンピック期間中の9億7500万ポンドと肩を並べる。

W杯を主催する国際統括団体ワールドラグビー(WR)の2015年の収入は、史上最高の約3億4500万ポンド(約447億円)。WRはW杯で得た利益を普及や国際大会の開催などに投資している。中でも今、最も熱い視線を向けているのが、新興市場のアジアだ。

「アジアのラグビーは驚くべき進歩を遂げており、輝かしい未来が待っている。W杯が掘り起こす潜在的な市場は計り知れない」と、WRのビル・ボーモント会長。アジア初開催となる日本大会でも、欧州などと同様の熱狂を期待する。

日本大会のチケット総数180万枚のうち、既に9割以上が売れ、反響は組織委員会の予想を上回る。WRのブレット・ゴスパー最高経営責任者(CEO)は断言する。「日本大会は歴史上、最もインパクトのあるW杯になるはずだ」

「全48試合を満員にするように、最後まで進めていきたい」。8月26日に都内で行われた記者会見で、ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会組織委員会の嶋津昭事務総長は、チケット総数の90.5%にあたる164万枚が売れたことを誇らしげに報告した。

過去8大会のW杯はいずれも、伝統と人気がある欧州、オセアニア、南アフリカでの開催。アジア初となる今大会には当初、盛り上がりを懸念する声があったが、開幕を間近にし、関係者は手応えを感じている。

WRのブレット・ゴスパー最高経営責任者(CEO)は、「ラグビーの発展の軸はW杯」と言い切る。WRの拡大戦略は、W杯組織委から受け取る大会保証料や放映権料、スポンサー料などを財源としており、W杯の成功が、ラグビー界全体の未来にとって不可欠だからだ。

19世紀末に設立されたWRの前身、国際ラグビーボード(IRB)は、長くアマチュアにこだわっていた。世界最強を決めるW杯が創設されたのを機にプロ化が進み、W杯はラグビー界にとって最大の収益事業となった。

WRはサッカーのW杯や五輪と同様、公式スポンサーを厳格に管理し、大会のブランド化を促進。開催都市にファンが集う「ファンゾーン」を設け、大会前には開催都市を中心に優勝トロフィー「ウェブ・エリス杯」を巡回させるなど、プロモーションを積極的に進める。2007年フランス大会の黒字額は1億2200万ポンド(約160億円)と、第1回大会の100倍以上となり、商業的な成功は決定的になった。

一方で、WRの加盟国・地域は124(19年8月現在)と、200を優に超す国際オリンピック委員会(IOC)や国際サッカー連盟(FIFA)などに比べて見劣りするのは否めない。伝統国中心のビジネスモデルから発展させるためにWRが注目したのが、日本を含むアジアだった。

2009年に2019年大会の日本開催を決めたものの、新国立競技場の建設計画が2015年に一時白紙となったこともあり、WRには成功に懐疑的な見方が多かった。その不安を払拭したのが、同年のW杯で日本が南アフリカに逆転勝ちした「史上最大の番狂わせ」だったという。日本中が歓喜した大金星は、世界のラグビーの発展にも大きな意味を持つ勝利だった。

WRなどは2017年、「インパクト・ビヨンド2019」と称した振興策を制定、2020年までにアジア地域の加盟協会に850万ポンド(約11億円)以上を投資することを決め、普及や育成を進めている。アジアのラグビー人口を16年の56万人から2020年に100万人に増やすことを目標とした「A1M(Asia 1 Million)プロジェクト」は、既に達成したという。

2015年大会でも運営に関わった日本大会組織委のミック・ライト・エグゼクティブ・ディレクターは、「W杯効果が日本とアジアで既に生まれている。大会が始まれば、さらなる起爆剤になるはずだ」と語る。

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