平尾魂、息づく球技場~神戸・御崎公園

御崎公園球技場の前に立つ園田さん。平尾さんを思いながら試合を待つ(神戸市兵庫区で)=前田尚紀撮影

ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会は、26日から神戸市の御崎公園球技場でも試合が行われる。2002年のサッカーW杯でも会場となったが、実は16年に53歳で亡くなった元日本代表監督、平尾誠二さんのアイデアが設計に生かされていた。選手とファンの距離を近づけて――。こんな声をくみ取り、事業を担った神戸製鋼所の元上司、園田学さん(64)は、平尾さんを思いながらキックオフの時を待つ。

2015年9月8日、読売新聞のインタビューに答える平尾誠二さん。この4日後、大病が判明した

「ファンと近く」共に作った担当者が感慨

「彼の熱意がそのまま形になったスタジアム。一緒にW杯を見たかったね」。球技場横にある芝生広場で、園田さんはそう話した。広場は「自分も隣の球技場でプレーするんやと、子どもたちに思って練習してほしい」という平尾さんの思いから設けられた場所だ。

スタジアムは、1970年開設の神戸市立中央球技場が前身で、サッカーW杯に合わせて改築された。市の事業コンペには、神戸製鋼所と大林組が共同で参加。園田さんはラグビー場としても最高の舞台になればと、過去に同じ部署で働いた平尾さんに意見を求めた。

「ドーンというタックルの音がラグビーの醍醐(だいご)味。できるだけ選手と観客を近づけてください」「試合後にファンと選手が握手できないと」
提案を受け、グラウンドと客席を分ける塀の手すりまでの高さは、場所によって1・6~1・8メートルと低くした。また、エンドラインから客席も最短6メートルと近づけ、俯瞰(ふかん)できるようスタンドは傾斜を付けた。座席幅は予定より狭くなったが、平尾さんは「隣の人と、より喜び合えるわ」と笑った。

園田さんはコンペの事業案発表の時を思い出す。「ここはラグビーの聖地にもなれます」。その場に同席した平尾さんは市に対し、予定の3分を大幅に超える15分間、熱弁を振るった。

改築後、2人はお好み焼き屋で完成を祝った。「選手がぶつかり合う様子、よう見えるやろなあ」。園田さんは、その時の平尾さんの顔を忘れない。亡くなった平尾さんのメモリアルマッチとして、昨年6月に行われた日本代表の試合では、終了後、選手がスタンド前でファンの握手に応じる姿があり、園田さんは「平尾が思い描いた光景や」と目頭が熱くなった。

平尾さんが招致に尽力した日本でのW杯。神戸では4試合が行われる。園田さんは「ここは平尾の魂が宿る場所だから、彼は天国から試合を見てると思う。『もっと走らんかい』とか、彼らしいヤジを飛ばしながらね」と笑った。

海外の選手と交流する人たち。「選手が身近な存在に」という平尾さんの提案が生かされている(2014年)=園田さん提供

〈御崎公園球技場〉球技専用のスタジアムで、収容人数は約3万人。26日は午後7時45分からイングランド対米国戦が行われる。

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