快進撃の原動力、姫野の「ジャッカル」はココが違う

ラグビーワールドカップで、日本代表の快進撃の原動力となっているのが姫野和樹選手だ。相手からボールを奪い取り、ピンチを一瞬にしてチャンスに変えるプレー、「ジャッカル」でファンを熱くさせている。姫野選手の「必殺技」について、恩師である帝京大ラグビー部監督の岩出雅之さんに聞いた。(撮影協力=帝京大ラグビー部)

「ジャッカル」とは? ラック成立前にしかける

タックルで倒された選手はボールを手放さなければならない。ボールを地面に置いた時に他の選手が集まり、両チーム1人ずつ以上が立ったまま押し合うと「ラック」となる。

ラックが成立するまでの間に、防御側が素早く手を入れてボールをもぎ取るプレーが「ジャッカル」だ。ボールが奪えなくても、激しい圧力をかけて相手の球出しを遅らせれば、攻撃をスローダウンさせる効果があるうえ、相手がそのままボールを放さなければ「ノットリリースザボール」の反則を誘うことになり、ペナルティーキックを得られる。

ラックが成立してしまうと、ラックの中ではボールを手で扱えない。ラック状態で前方や横からラックに加わることも反則だ。

姫野はファイター

ジャッカルは立った状態で相手のボールを奪う

膝を付いた状態でボールを奪うことは反則

ジャッカルは立った状態で行わなければならない。膝がついた状態では反則となる。立った状態でボールを奪おうとすると、無防備な姿勢となる。そこに相手は倒そうとスピードをつけてタックルしてくる。岩出さんは「恐怖心が生まれ、代表クラスの選手でも奪いにいく決断をするのは簡単ではない」という。

しかし、姫野選手については「当たり負けしない強靭(きょうじん)な肉体があり、立った状態でタックルをされてもなかなか倒れない。その上、勇気があるだけではなく、試合中にチャンスがあれば常にジャッカルを狙っている。彼はファイターなんです。精神面もすごい」と評価する。

勝負所で「ジャッカル」を決めるワケ

常に「ジャッカル」を狙っている姫野選手=アイルランド戦から

岩出さんによると、ジャッカルは大学時代から姫野選手の「必殺技」で、「出場した試合の全部でやっているという印象」という。そして「大学時代から勝負所で決めてくれるのが最大の魅力だった」といい、それを可能にしているのが、もう一つの武器、「スタミナ」だという。

岩出さんは「試合の終盤など、相手チームが疲れて、倒れた選手へのフォローが遅くなったときに、ジャッカルのチャンスは生まれる。ただ、その時は当然、自分たちも疲れている。しかし姫野はスタミナがあるので、こうした時間帯でも相手より速く、激しいプレーができる。だからジャッカルが決まっている」と分析する。

帝京大ラグビー部監督の岩出さん

今大会でも姫野選手は試合の行方を左右するような大事な場面でジャッカルを成功させることが多かった。アイルランド戦でも後半リードした後、自陣ゴール前で相手の連続攻撃というピンチがあったが、チャンスに変えたのは、姫野選手のジャッカル。アイルランドの反則を誘った。

会場の大画面ではジャッカルの後、雄叫(おたけ)びをあげる姫野選手の様子が映し出されることも多く、この時スタジアムの盛り上がりは最高潮に達する。

13日のスコットランド戦でも、姫野選手の「必殺技」に期待したい。(聞き手:読売新聞オンライン 河合良昭)

岩出 雅之( いわで・まさゆき )

1958年、和歌山県生まれ。帝京大学ラグビー部監督、同大医療技術学部スポーツ医療学科教授。96年から帝京大学ラグビー部監督となり、同部は2009年度から全国大学選手権で9連覇を達成。著書に『常勝集団のプリンシプル 自ら学び成長する人材が育つ「岩出式」心のマネジメント』(日経BP社)など。

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