帝京大卒「七人の侍」、恩師はLINEで励ます

ラグビーワールドカップ(W杯)で快進撃を続ける日本代表。姫野選手や堀江選手など、メンバーのうち7人が帝京大ラグビー部の出身です。7人とも13日のスコットランド戦の登録メンバーに入りました。監督の岩出雅之さんは、教え子たちの活躍をどのように感じているのかを聞きました。(読売新聞オンライン 河合良昭)

■激励も、喜びもLINEグループ「帝京ジャパン」で

アイルランド戦後にLINEの「帝京ジャパン」グループに送られた写真。左から流、堀江、姫野、坂手、松田、ツイ、中村の各選手(帝京大ラグビー部のフェイスブックから)

 

――日本代表31人の中に帝京大出身者は7人います。教え子たちの活躍をどのように感じていますか。

「本当にここまでよく頑張っています。大会中も激励の言葉を送っているのですが、一人ひとりに送るのは大変なので、LINEで『帝京ジャパン』というグループを作り、そこでやり取りをしています。もう、アドバイスはありません。『頑張れ』『頑張りました』という程度です。選手たちは写真を送ってくれますね。それは、皆さんにも見てもらおうと思い、ラグビー部のフェイスブックでも公開しています。ただ、(ツイ)ヘンドリックだけ、LINEをやっているのかわからないので、携帯メールでのやり取りです」

■大ブレイクの姫野選手

アイルランド戦に勝利し、ガッツポーズで喜ぶ姫野選手

――姫野選手は今大会で大ブレイクした感じですね。

「社会人になってからやっているプレーとW杯のプレーで変わりはないと思います。昔からすごかったですよ。ただ、W杯では、そのプレーが世界トップクラスでも通用することが立証されました。そしてこれまでラグビーをあまり知らなかった人も、彼の存在を知ってくれた。ブレイクというよりは、やっと姫野のすごさに気が付いてくれたか、という感じですね」

――姫野選手は大学時代、ケガに悩まされました。

「大学に入ったときから、身体能力はモノが違った。ただ大きな体に加えて筋力も強いので、激しいプレーを続けると、支える足にかかる負担も大きくケガもしました。将来、世界で戦える大器であることはわかっていたので、長時間試合に出場させないようにして『温存』することを心がけました。『お前は将来、世界で戦えるから』と言っていましたが、その時は信じていませんでしたね。出られなくて干されたと思っていた時期もあったようです。途中から理解してくれましたが」

――社会人では1年目から主将に抜擢(ばってき)され、「人生で一番ネガティブ」というほど苦しんだといいます。

「その頃、一度会いました。どのように人の心を動かしていけばよいのかがわからずに、悩んでいました。でも、置かれた状況や心情を詳細に全て吐露してくれました。それですっきりしたようでしたから、『タフな人間になれる良い経験だね』と言葉をかけました。その後、精神的に成長し、そして凄い選手になりました」

■偉ぶらない堀江選手 流選手から田中選手へ交代する「流れ」も良い

堀江選手

――堀江選手はアイルランド戦終了直後のインタビューで「まだ先がある」と緩みないコメントを残し、ベテランらしさを見せました。

「大学時代から冷静でいつも淡々としていました。プレーはフィジカル面の圧力がさらに進化しましたね。そして良いプレーをしても決して偉ぶらない。人柄とプレーが一致するから、みんな付いていきますね、彼には」

流選手

――流選手も先発で出場しています。

「流が先発して、田中選手が途中から出場するという『流れ』も良いですね。流は前半から速いテンポのラグビーを組み立てる。相手が流のテンポに合ってきた時間帯にボールさばきのテンポが違う田中選手が入る。この頃は、相手も疲れが出て集中力が切れる頃でもあるので、集中力の高い田中選手が相手のミスを突いてチャンスを作る。この2人で80分をまとめているように見えます。2人のコンビネーションが試合を重ねるごとに良くなっている。日本の武器になっていますね」

■「にわかファン」に見てほしい、中村選手の堅実さ

左から中村、坂手、松田、ツイの各選手

――中村選手もダブルタックルで相手を止め、トライにつながるパスを出すなど、勝利に貢献しています。

「体がぶつかり合うところで戦って良い仕事をしていますね。相手からトップスピードでタックルされるポジションですので、ミスの危険性が高いのですが、ミスが少なく堅実なプレーをしている。トライをしたり、キックを蹴ったりといった目立つポジションではないけど、注目してほしいですね」

――坂手選手はサモア戦で先発し、松田選手とツイ選手も試合に出場しています。

「坂手は良いプレーも悪いプレーも、全て次につながる経験になるでしょう。世界のトップレベルを肌で感じたので、今後はそれを目指して日々取り組むことができる。松田はもっと出たくてうずうずしているんじゃないですか。体も張れるし、走れる良い選手ですから。ヘンドリックは出場したときは必ずボールを前に進めて、きっちり良い仕事をしています」

姫野選手はサモア戦後、帝京OBで集まって撮影した写真をツイッターに投稿した

「日本代表全体を見ても、各自が自分の仕事をしっかりしていて良いですね。その中で、過去3戦中2戦でゲームキャプテンを務めた(ピーター・)ラブスカフニ選手、能力のある(アマナキ・レレイ・)マフィ選手と並ぶチームの中心に姫野も加わりました。彼は次のリーダーになれる可能性があります。日本代表の注目度も高くなっているから、もっと高みを目指して勉強して、『相手チームから、尊敬されるけどグラウンドの中では恐れられる』という存在に成長してほしいですね」

――いよいよ、目標のベスト8が決まるスコットランド戦です。

「私はもう勝ち負けに責任のない立場だから、熱烈なファンの一人として教え子たちの活躍を楽しんでいます。次のスコットランド戦にはぜひ勝って、ベスト8に進んでほしいですね」

日本代表を次々と生み出す、帝京大ラグビー部、岩出監督の指導方法について触れた記事、「長時間練習…それでも体育会系指導が勝てないワケ」はこちら

岩出 雅之( いわで・まさゆき )

1958年、和歌山県生まれ。帝京大学ラグビー部監督、同大医療技術学部スポーツ医療学科教授。96年から帝京大学ラグビー部監督となり、同部は2009年度から全国大学選手権で9連覇を達成。著書に『常勝集団のプリンシプル 自ら学び成長する人材が育つ「岩出式」心のマネジメント』(日経BP社)など。

 

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