ラグビーW杯 伝説の白星 今夜再び…通算成績1勝10敗

スコットランドを破り、胴上げされる日本代表の宿沢監督(1989年5月28日)

スコットランドを破り、胴上げされる日本代表の宿沢監督(1989年5月28日)

89年 宿沢ジャパンの奇跡

 日本にとってスコットランドは因縁の相手だ。

通算対戦成績は日本の1勝10敗と大きく負け越しているが、1989年5月に東京・秩父宮で対戦した際は、宿沢広朗監督率いる日本が28―24で大金星を挙げた。

ラグビーの伝統国・地域を初めて倒した歴史的勝利が追い風となり、「宿沢ジャパン」は2年後の第2回ワールドカップ(W杯)でジンバブエを下し、W杯初勝利を飾った。

スコットランドとはW杯で91年、2003年、15年に対戦し、3戦全敗。15年の前回大会では南アフリカとの初戦で金星を挙げた後、中3日で臨み、10―45で大敗した。これが唯一の黒星となり、グループリーグで3勝を挙げたものの8強入りを逃した。

「苦しい時間大事」「30年ぶり期待」

 日本代表の1989年の勝利は当時、「歴史的大金星」とたたえられた。この試合に出場していた選手たちは、「日本の成長を見せ、当時の感動を再び」と現在の代表にエールを送る。

89年5月28日、東京・秩父宮ラグビー場。日本は攻め込まれる時間が続いたが、激しいタックルで対抗し、許したトライは一つだけ。逆に敵陣深く攻めた好機を生かし、5トライを奪った。

林敏之さん

林敏之さん

28―24。神戸製鋼に所属していたロックの林敏之さん(59)は「体格差は歴然。どれだけ攻められてもはね返し、少ないチャンスをものにできた」と振り返る。自らもラインアウトからの攻めでトライを挙げた。

相手は中心選手を全英代表「ライオンズ」に送り込んでいた。日本はミスにも助けられ、林さんはこの時の勝利を「夢のようだった」と振り返る。だが、その2年後の91年W杯では、ベストメンバーのスコットランドに9―47と完敗を喫した。「相手からは、日本に連敗はできないという意地が見えた。力で圧倒され、実力差を感じた」という。

今大会には、スコットランドで主将も務めた91年W杯メンバー、ガビン・ヘースティングズの息子、アダム・ヘースティングズもメンバーに名を連ねる。来日中のガビン氏と林さんは、東京での催しで当時の秘話などを語り合ったという。決戦を観戦する林さんは「日本の成長を示してほしい」と期待する。

梶原宏之さん

梶原宏之さん

89年当時、東芝府中でプレーしていたフランカーの梶原宏之さん(53)は、宿沢広朗監督から「相手はフォワードがパワーと体の大きさを生かして突破しようとしてくる。鋭いタックルで出足を止めろ」と指示を受け、愚直にタックルを繰り返した。特に終盤はスコットランドに押し込まれる展開が続き、「口から心臓が出そうなぐらいの苦しさだった」と当時を思い返す。

田倉政憲さん

田倉政憲さん

突破を許さなかった先輩たちの姿に胸が震えたと懐かしむのは、三菱自工京都でプロップだった田倉政憲さん(53)だ。突破を許さないため、自らも死にものぐるいでタックルを続けた。「序盤にできたことが終盤におろそかになってはいけない。80分間、戦い続けること」。この試合で学んだ信条を、今は京産大コーチとして後輩たちに伝えている。

堀越正己さん

堀越正己さん

一方、早大生だったスクラムハーフの堀越正己さん(50)には勝算があった。「相手は防御の時に(選手同士の)間が空くという分析があった。バックスに良いボールが供給できれば、持ち味のパスワークと俊敏性でトライは取れると考えていた」と証言する。この勝利をきっかけに、日本は全敗に終わった87年の第1回W杯から立ち直り、西サモア(現サモア)、トンガ、韓国と争った91年W杯予選を勝ち抜いた。堀越さんは述懐する。「自信と勇気を与えてくれた、大きな一戦だった」

今大会のスコットランドの印象を、梶原さんは、「精神面を含めた総合力の高さは、当時と共通したものがある」とし、「今回の戦いでも苦しい時間帯は来る。そこでどう戦うかが大事」と語る。

13日の試合で再び勝利をつかむことはできるのか。4人の願いは共通している。「W杯は命を懸けてもいいほどの舞台。30年ぶりに勝って、自他ともに認める強豪の仲間入りをしてほしい。8強入りを果たすことができれば、日本ラグビーの転換点となる」

◆日本のベスト8進出条件
・日本が勝つか引き分け→1位で突破
・日本が負けて+BP2→1位で突破
・日本が負けて+BP1、スコットランドが+BPなし→2位で突破
・日本が負けて+BP1、スコットランドが+BP1→敗退
・日本が負けて+BPなし→敗退
※BPは「ボーナスポイント」。4トライ以上挙げた場合、7点差以内で惜敗した場合にそれぞれ1点が与えられる

◆ラグビーW杯の勝ち点
勝ちが4点、引き分けが2点、負けは0点。4トライ以上を挙げた場合と、7点差以内の負けには、ボーナスとして1点が与えられる。

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