【解説】史上初の8強入りを達成したラグビー日本代表の戦いを振り返る

ラグビーワールドカップで13日、強豪スコットランドを破り、史上初の8強進出を日本代表。その試合ぶりについて、読売新聞オンラインの解説者を務めた元日本代表の大久保直弥さん(44)は、「耐えに耐え、勝ち取った歴史的勝利」と評しました。歴史に残る一戦を、ポイントごとに振り返りました。

スコットランドを破り、喜ぶ日本代表=杉本昌大撮影

【前半開始】
日本の意表を突くゴロパントで、決戦が始まった。そこからマイボールにしたのだから、日本はうまい立ち上がりを見せた。その後、松島が走ってキックで競り合った場面は、相手がボールを持っていない松島を小突いた反則に見えたが、審判は流した。

【スコットランドが先制、日本0-7スコットランド】
スコットランドが先制トライ。名手ラッセルが、日本の小柄な流の防御を突破した。体格のミスマッチを狙っていた感じがする。日本をよく研究しているし、スコットランドの動きが非常にいい。ただ、日本もチャンスは作れている。落ち着いて、ボール保持者をしっかりフォローする攻撃の形を作って取り返していきたい。

【日本が松島のトライで追いつく 日本7-7スコットランド】
日本の松島が見事なトライを決めた。福岡が大外から抜け出し、そばで内に切れ込んだ松島が突っ走った。スコットランドは開始から、この両ウィングを相当警戒しプレッシャーをかけていた。その中で決めたのだからさすがと言うほかにない。2人につないだラファエレの巧みな飛ばしパスも見逃せない。ゴールキックも決まって同点。いいムードになってきた。

【稲垣が持ち込み逆転 日本14-7スコットランド】
松島が右サイド寄りを鮮やかに突破し、そこから日本の勝ち越しトライが生まれた。倒された松島の周りで密集ができ、スコットランドの防御がサイド寄りに偏ったところで、フォワードが中央になだれ込んだ。決めたのは稲垣。堀江、ムーア、トゥポウというつなぎは、ラックにせずに流れを止めなかったのが良かった。日本はここまでほとんどキックを使わず、ボールを回して攻めてきた。9番と10番の的確なゲームメイクが奏功している。

【福岡が3試合連続のトライ 日本21ー7スコットランドで前半終了】
ティム(ラファエレの愛称)が、松島に劣らないくらい絶好調だ。ラン、パス、キック、すべて最高の切れ味。その彼が絶妙なキックを転がし、エース福岡の貴重なトライが生まれた。当たっていなかった田村のゴールキックも、比較的難しい位置から成功。この7点は、スコットランドに大きくのしかかる。21-7の折り返しは、期待以上だ。

【後半開始早々に福岡がトライ 日本28ー7スコットランド】
日本が早々にトライ。この時間帯に、リードしている側が先に1トライ1ゴールを加えるというのは、決定打になりうる。福岡が、相手ボールをむしり取って独走し、インゴールに飛び込んだ。いい形でボールを奪えたのは、日本の前に出る防御が機能したからだ。スコットランドはバックス陣のラインが、前半から深い。後ろ目に位置し走り込む構えなのだが、その出足を日本が前に出て封じた。福岡が奪う前に激しいタックルを見せたのはリーチ。さすが主将という働きだった。

【スコットランドが1トライ 日本28-14スコットランド】
追い詰められたスコットランドが1本返した。前掛かりの布陣で攻め込み、フォワードが力づくで飛び込むトライ。強豪の意地を見る思いだ。日本としては、前掛かりになった相手の裏を突くキックを使うなど、少しペースを変えてみてもいい。そんなタイミングで、スクラムハーフが流から田中史に代わった。こういう時のゲームメイクが、史は抜群にうまい。いいタイミングの交代だ。

【スコットランドがさらに1トライ 日本28-21スコットランド】
もう1トライ1ゴールを、スコットランドに返された。この時間帯、少し日本の動きが落ちてきた。攻撃も防御も、サポートが遅れて孤立する局面が目立ち、それが失点を招いている。前半からボールを回し続けた「攻め疲れ」が、若干みえる。とはいえ、まだ7点リード。余計なペナルティーをせず、落ち着いて攻撃を組み立てれば、追加点はきっと奪える。

【後半25分過ぎまで】
日本に、我慢の時間帯が訪れた。フォワード陣の足が止まり、突破を許す場面が増えてきた。ここで、スコットランドの方がきつい立場だということを思い出したい。すでに日本にボーナス勝ち点1点を許し、相手はもう点差をつけて勝たなくてはいけない状況にある。自陣に攻め込まれた苦しい場面で、姫野得意の「ジャッカル」が決まりボールを奪った。ここから流れを奪い返せ!

【残り約5分】
ここからは気持ちだ。それ以外に、言うことはない。勝ち切れ!

【試合終了】
そして、歴史が変わった。残り3分の相手ボールスクラムで、日本はビクともしなかった。モールでも全く押されなかった。その後のスコットランドの連続攻撃を激しい防御で止め、ボールを奪った。後半なかばから、ずっと自陣にくぎ付けで、どんなに苦しかっただろう。よくやってくれた、ありがとう!

6万7666人という、信じられない数字の観衆を前に、悲願のワールドカップ8強入り。選手たちの努力と、会場のむせかえる熱量。数々の災害に耐え、乗り越えてきた人たちのことも脳裏に浮かぶ。さまざまなラグビー界の先輩方の顔も。まさにジャパンの歴史的勝利だ。(大久保直弥)

まとめ
私が選ぶなら、この試合のMVPはラファエレを選びたい。福岡と松島のスピードを生かし、前半のうちに3トライを奪う攻勢を演出した。流と田村のゲームメイクも奏功した。ほとんどキックを使わず、スコットランドの防御網が手薄な方向をしっかり見極め、そこにボールを動かした。相手としては、やりたいラグビーを日本にされた感覚だったろう。体力の消耗を顧みず、果敢に攻めたジャパンの姿勢に拍手を贈りたい。

そして、ティア1の相手から厳しくマークされた中で、次々とトライを奪った福岡と松島! 後半最初に福岡が相手ボールを奪って独走したトライは、スコットランドの出鼻をくじいた。そこから点差を詰めてきた相手のプライドも感じたが、結果的には、あのトライの差で逃げ切った。残り10分を自陣で守り切った防御は、ジャパンの執念をみた。

4年前、エディー・ジャパンは、スコットランドに大敗して、8強に届かなかった。その相手に勝ちきって、ジェイミー・ジャパンが初の8強入りを達成した。チームの進化を象徴する勝利でグループリーグを1位通過した。ずっとジャパンについて回った「エディーの呪縛」から、これで解き放たれる。準々決勝の相手は、あの南アフリカ。チャンスはある。ホームの声援を背に、ここまで来たら、1勝でも多く見せてくれ!

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