34歳田中 涙の軌跡…「ここから進化していける」

準々決勝の南アフリカ戦後、健闘をたたえ合う田中(右)とラファエレ=冨田大介撮影

準々決勝の南アフリカ戦後、健闘をたたえ合う田中(右)とラファエレ=冨田大介撮影

涙もろい男は、あふれ出る感情を抑えようともしなかった。ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会に臨んだ日本代表のスクラムハーフ田中史朗(34)(キヤノン)は、20日の南アフリカ戦(東京)の敗戦後、大粒の涙をこぼした。

涙のわけは、悔しさか寂しさか。「負けて悲しいし、もしかしたらこれが最後かもという思いもあった」と明かす。2008年に日本代表デビューを果たし、積み重ねたキャップ数は今のチームでは最多の75にまで到達。W杯は11年大会から3大会連続で出場した。

いち早く海外挑戦するなど常に先頭で駆けてきた。原点は11年大会の惨敗。1分け3敗に終わり、人気を下火にさせてしまった責任を感じた。挽回しようと臨んだ15年大会では3勝を挙げたが、直後のトップリーグに日本協会の不手際で観客が集まらず、怒りを口にした。全ては「日本にラグビー文化を根付かせたい」という思いからだ。

だからこそ南アフリカ戦後、赤と白のジャージーで埋まった観客席を見てこみ上げるものがあった。思い描いていた景色を目の前に、「日本ラグビーがここから進化していけるんだな」。喜びの涙でもあった。

年を重ねるにつれ疲れが取れにくくなり、練習後も「もうおっさんやから」、「しんどい」という言葉が口をつくようになった。流大(ゆたか)(27)(サントリー)ら若手も台頭し、代表入りをあきらめかけたこともあった。8月下旬に代表が発表されると、やっぱり泣いた。

今大会は全5試合で途中出場。試合の展開に応じて攻撃を活性化させたり、落ち着かせたりとベテランらしくチームを支えた。「若い選手が引っ張ってくれればラグビー文化ももっと根付くし、もっと上を目指せる。自分のラグビー人生の中ではいい戦いだった」。スタジアムを出る時は、満面の笑みだった。(中安真人)

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