高橋銀太郎氏が読み解く南ア戦…強固な防御、世界の壁

ラグビーワールドカップ日本大会で、日本代表は20日、初めて進出した準々決勝で南アフリカと対戦し、3-26で敗れた。歴史的な一戦となったこの試合の要所要所を、読売新聞オンラインで解説者を務めた高橋銀太郎さん(35)(現役時代はトップリーグのクボタで副将)が解説した。

後半、南アフリカに阻まれるリーチら=伊藤紘二撮影

【南アがトライで先制、日本0-5南ア】
日本が早々に先制トライを許した。やはり、南アのスクラムは強烈だ。南アボールのファーストスクラムで押し込まれ、そこからの展開で相手のウィングが田村を抜いて、インゴールに飛び込んだ。南アにしてみれば、スクラムやラインアウトといったセットプレーで圧力をかけて防御の弱いところを突く、いつものラグビー。日本は慌てず、まずは相手陣に入ってプレーしたい。

【開始10分過ぎまで】
ビースト」の異名をとる南アのムタワリラがシンビン(反則による10分間の退出)となった。稲垣を頭から落とした、非常に危険なタックルだった。しかし、日本にとってはトライがほしいチャンスだ。ここまで、日本がパスをつなぐ連続攻撃よりもキックを多用して攻めを組み立てているのは、少し意外だ。まず相手陣に入りたいという意図が見える。

【田村のペナルティーゴールで、日本3-5南ア】
田村のペナルティーゴールで、日本が2点差に迫った。相手の人数が少ない時間帯に、得点できた意義は大きい。スクラムでうまく反則を誘った。相手陣でプレーできれば、日本にはスペースへボールを運ぶ力があるから、得点機が生まれる。福岡が10分過ぎにライン際で快走を演じたのも、明るい材料だ。南アの前で止める防御の強さは、試合前の想像を上回るものがあるが、粘り強く接戦を続けたい。

【前半35分過ぎまで】
南アの背番号9のデクラークは、スクラムからボールを出す時、少し走ってからパスを出したり、正確なキックを上げるプレーが目立つ。南アのスクラムハーフは走れるのが厄介だ。ただ、日本もよく我慢して反則をせず、失点を防いだ。南アに攻め込まれる前に相手陣内で根気よくパスを回した連続攻撃は良かった。相手陣内では、ああやって攻め続ければ相手が少しずつ消耗する。南アが、大外に振られて福岡や松島に抜かれるのを嫌がっていることも感じられる。それにしても予想外のロースコアな展開だ。

【前半終了】

日本陣内に攻め込まれた前半最後の10分間を無失点でしのぎ、3―5で折り返した。あの10分間は、最後にインゴールに飛び込まれた場面と、ライン際で南アのオフロードパス(タックルされて体勢を崩しながらのパス)が通らなかった場面が、ヒヤリとしたが、南アの反則でトライを免れた。ただ、その反則も、日本があきらめずに粘り強いディフェンスを貫いていたから起きた。よく我慢した。

前半終了時、日本は全員、走ってロッカールームに引き上げた。南アは何人か、走れずにトボトボ歩いていた。ボール保持率は日本が68%と表示された。スクラムを軸にフォワード戦にこだわった南アは、おそらくかなり消耗した。もっと点差をつけたかったことだろう。日本としては、悪くない試合展開。後半、相手陣でプレーする時間を増やせれば、きっと活路は開ける。

【後半早々、南アがペナルティーキック2本を決め日本3-11南ア】

早々にペナルティーゴールを2本決められ、日本がちょっと離されてしまった。2本とも、スクラムを押されたところから、反則を犯した。特に2本目は、日本のスクラム第1列を稲垣から中島に代えた直後だけに、ちょっと応える。これまでの4試合では、選手交代直後のスクラムで押し返し、日本が流れを作っていた。南アのラグビーは、前半から単調で、変わっていない。それゆえに、攻略は容易ではない。

【また南アのペナルティーゴール、日本3ー14南ア】

南アの名手ポラードが、ペナルティーゴールを一本外してくれた。日本陣内から抜け出せない展開が、後半はずっと続いている。何よりも、スクラムが一方的に押され続けている。それでも、3-14で終盤戦へ。まだ十分、希望の持てる点差だ。これは日本の防御が、よく頑張っていることの表れでもある。強固な防御の穴を突いて、何とか南ア陣へ入りたい。

【トライなどを決められ、日本3-26南ア】

南アのデクラークに、痛いトライを奪われた。ラインアウトからのモールで20メートルほど押し込まれただろうか。持ち出したフォワード第3列の選手に、トライに直結するオフロードパスを通された。日本は後半、マイボールの時間が短すぎる。とにかく、相手陣で回す時間を作りたい。

【後半35分頃まで】

さらに1トライを奪われ、突き放された。ようやく日本が相手陣に攻め込んだと思ったら、ラインアウトでボールを奪われて好機を逸し、その後のカウンター攻撃で突っ走られ、最後は相手のウィングに決められた。水を空けられてから、日本はスクラムハーフを流から田中史に代えた。これは遅きに失した感が否めず、残念だ。

ノーサイド。膝をつくリーチ=杉本昌大撮影

【試合終了。日本3-26南ア】

日本の冒険が終わった。3-26。このぐらいの失点は覚悟すべきかと思っていたが、攻め込む場面を作れなかった。後半は特に、マイボールの時間が短く、日本が先に消耗した。これほどスクラムで圧倒されるジャパンを見たのは、久しぶりだ。完全に日本ホームの雰囲気の中、南アフリカのフォワード戦へのこだわりと意地を見せつけられた。

日本の誇る福岡と松島の「ダブル・フェラーリ」には、南アフリカも脅威を感じているように見えた。しかし、突っ走る場面が、この日は前半に1度、福岡が突破した場面くらいだった。いい形でバックスにボールを供給できるチャンスを作れなかった。スクラムで圧倒された時にどうするか。すぐに球を出す「ダイレクト・フッキング」などの手もある。数年来、飛躍的にスクラムが力をつけてきただけに、それが通じなかった時の手立てに乏しかった気がする。南アから4年後への宿題をもらった。

ワールドカップが始まる前と今と、日本は別のチームへと飛躍した。アイルランド、スコットランドという「ティア1」に属する強豪を連破し、4戦全勝の1位で決勝トーナメント進出。準々決勝も目の色を変えて攻めてきた南アと、後半まで接戦を演じた。速いテンポでボールを回すラグビーも美しく、前で止める激しい防御には胸を打たれた。本当に強くなった。足並みを合わせ、日本人のラグビー熱や理解も大幅に高まった。日本ラグビーの世界との戦いが今、幕を開けた気がする。

関連ニュース

<<
ニュース一覧へ戻る
>>