[桜の躍進]<中>指揮3年 集大成のパス

 スコットランド戦の前半25分、トゥポウ〈15〉からのオフロードパスを受けてトライを決める稲垣(右)。3本のオフロードパスがつながった=伊藤紘二撮影
スコットランド戦の前半25分、トゥポウ〈15〉からのオフロードパスを受けてトライを決める稲垣(右)。3本のオフロードパスがつながった=伊藤紘二撮影

タックルを受けながらボールをつなぐ「オフロードパス」が、日本のトライシーンを何度も演出した。確実性の高くないプレーを恐れず、倒れ込む場所を瞬時に判断してサポートする選手へ的確に球を渡す。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)が、2016年9月の就任以降に植え付けた日本の強さが凝縮されたプレーだった。

一つ目は「一瞬の判断」だ。「大事な試合に勝つには重圧を受け止め、瞬間でなにをすべきか判断する必要がある」と指揮官は言う。そのため、3年間かけて自主性を育んだ。選手主体で練習内容を考えるよう促し、主将のリーチ(東芝)以外にもリーダーシップの取れる選手を複数そろえた。

「選手が楽しんで自発的に取り組む方が自主性を持つことができる」と、宿舎でも服装を自由にするなどリラックスした雰囲気にこだわった。チームを徹底的に管理したジョーンズ前HC時代と正反対の光景だ。7か国から選手が集まったチームに一体感を作る狙いもあり、ワールドカップ(W杯)期間中もゲーム大会を開き、おもちゃのハンマーで堀江(パナソニック)と頭をたたき合った。

宿舎では選手が2~3人ずつ数台のパソコンに向かい、試合中の細かい役割を確認している姿があった。指揮官は自主性がチームに備わったと実感した。

徹底的な基礎練習も特徴だった。今年2月は「土台作りの期間」と設定し、何度もパス練習を繰り返した。徹底してオフロードパスに取り組んだのもこの時期。手や体格が小さい日本人には不向きとされ、4年前には原則禁止されていたが、「練習を続ければできるようになる」と言い続けた。

選手を信頼し、自信を持たせたことも大きかった。W杯序盤には強豪が日本の湿気に苦しんで球が手につかないミスを繰り返した。リーチらは球にせっけんを塗って練習しようと指揮官に提案。前回大会で同様の練習をしたことがあった。だが、指揮官は
一蹴(いっしゅう)
した。「必要ない。ずっと練習してきた自分の技術を信じるべきだ」

13日のスコットランド戦後、躍進の要因を問われたリーチは胸を張って答えた。「一番の理由は信じること。ジェイミーが変えてくれた」。かつて弱小国だった日本に「自分たちも戦える」という勇気が芽生え、思い切ったプレーにつながった。日本協会が日本代表でもプレーしたジョセフHCを選んだ決め手には、日本をよく知るということ以外に、代表強化に強い意志を感じたこともあった。3勝を挙げた前回大会を超える8強進出は、強いリーダーシップを持つ指揮官の思いが結実した瞬間でもあった。

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