一瞬で「沈む」強力タックル~上半身地面と水平に

相手選手と激しくぶつかり、組み合う。コンタクトスポーツであるラグビーを象徴するプレーが、タックルだ。今大会、日本代表は5試合で計700回近くものタックルを敢行した。守勢から攻勢に転じるための要となるこのプレーを、一流選手はどのように実践しているのだろうか。

久米雅・京都文教短期大准教授(41)らの研究グループは、日本のラグビートップリーグや大学生の選手らに協力してもらい、技術レベルや経験の差で、タックルに入る動作がどのように違うのかを分析し、目指すべきタックルの形を調べた。

実験では、選手の首や肩、足など約20か所に、赤外線を反射する「マーカー」を取り付け、練習用の「タックルバッグ」にタックルしてもらった。その際、マーカーに反射する赤外線を高速度カメラでとらえ、体の動きを詳細に再現した。

その結果、〈1〉タックルの動作に入る1歩手前で、トップリーグ選手の頭の位置は、大学生選手よりも高い 〈2〉タックルバッグに衝突する瞬間、トップリーグ選手の首(第六頸椎)と骨盤中心部の仙骨の高さがほぼ同じとなり、体幹が地面と水平になっている――などの傾向が明らかになった。

頭の位置が高いと、ステップでタックルをかわそうとする相手選手の動きを追いやすい。タックルの動作に入るギリギリまで視野を確保しつつ、急激に体を水平に沈みこませることで、衝撃力が強く、相手に押し負けないタックルを実現しているという。

さらに、トップリーグ選手は、衝突の時点で腕をタックルバッグに巻き付けていた。久米准教授は「トップレベルの選手は、相手の重心を外しながら衝突の力と相手を手前に引く力を同時にうまく使い、効率的かつ安全に倒している」と指摘する。

もっとも、実際の試合において、フィジカル(身体的な強さ)の強い選手を1対1で倒すのは容易ではない。日本代表のタックル成功率は、5試合で84~93%。2人がかりで相手に当たる技「ダブルタックル」なども駆使しながら、高い成功率を実現してきたようだ。

倒れたままでのプレーが禁止されているラグビーでは、タックル後にいかに素早く起き上がり、プレーに復帰できるかも、ゲームを左右する重要な技術だ。前日本代表ヘッドコーチで、今大会ではイングランドを率いるエディー・ジョーンズ監督も、2秒以内での起立を励行した。試合や練習でも、選手が立っているかどうかのチェックを欠かさなかったという。

「タックルし、倒れ、立ち上がる一連の動作は、無意識に近い。反復練習で磨き上げることができる」。千葉剛・防衛大学校ラグビー部監督(36)は、こう話す。

千葉監督は、学生を対象に、瞬時に低い姿勢をつくり、膝をつかずにタックルの動作を繰り返すトレーニングを集中的に実施した。その結果、トレーニング前よりも、試合中に素早く起き上がる割合が上がる傾向が確認できた。

元日本代表の広瀬佳司さん(46)は、選手が密集する場所に何度も飛び込み、ボールを奪いにいく現代表ナンバー8姫野和樹を例に「攻守とも素早い起き上がりは重要」と強調する。広瀬さんによると、歴代の日本代表は、マットを用意してレスリングをやりながらタックルと起き上がりを繰り返すトレーニングなどを通じて技術を磨いてきたという。

地道な反復で鍛え上げられた技が、ラグビーの醍醐味である激しい攻防を演出している。(科学部 野依英治)

関連ニュース

<<
ニュース一覧へ戻る
>>