エディーの数奇な因縁、結末は? イングランド-南アフリカ決勝の見どころ

解説=大久保直弥・サンウルブズHC

ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の決勝は2日、横浜国際総合競技場で行われる。2度目の優勝を目指すイングランドと、3度目の優勝を狙う南アフリカが顔を合わせる強豪対決だ。読売新聞オンラインで決勝の解説者を務めるサンウルブズの大久保直弥ヘッドコーチ(44)に、見どころを聞いた。(聞き手=読売新聞オンライン・込山駿)

チームの完成度は互角

イングランドのエディー・ジョーンズ監督(左)と南アフリカのラシー・エラスムス監督

エディー・ジョーンズという監督は、実に数奇な巡り合わせの持ち主だ。彼の率いるイングランドと南アフリカが決勝で顔を合わせることになった時、まずそのことに思いをはせずにいられなかった。

2003年のW杯で、エディーはオーストラリアの監督として、今回と同じように本命視されていたニュージーランドを準決勝で撃破した。しかし、決勝でイングランドに苦杯を喫し、準優勝にとどまった。続く07年W杯では、南アフリカのアドバイザーとして優勝の美酒を味わう。この大会の決勝では、イングランドの連覇を阻んだ。15年W杯ではご存じの通り、日本を指揮して南アフリカを破り、世界を驚かせてみせた。イングランドとも南アフリカとも開催国の日本とも、彼は極めて縁が深い。

エディーがトップリーグのサントリーを指揮した頃、私はコーチを務めていた。勝つための「準備」が誰よりも綿密で、ハードワークを選手に課す。指導者としてのカラーには当時も今も変わりはないと、今大会のイングランドを見ていて感じる。長く目標にしてきた「打倒ニュージーランド」を果たした次戦が決勝という、選手の気持ちの切り替えに難しい側面がある大一番となったが、指揮官は個人的に03年の轍を踏むまいという思いを強くしているはずだ。きっと抜かりのない南アフリカ対策を講じ、それを選手にしっかりインプットして臨むことだろう。

一方、南アを率いるラシー・エラスムス監督もまた、優れた手腕の指導者だ。3位だった15年大会後、成績が低迷したチームを18年から指揮。フォワードのコリシを南ア史上初の黒人主将に据えるなどして、短期間でチームを立て直した。今夏の南半球4か国対抗戦で初優勝を果たした。W杯では初戦こそニュージーランドに敗れたが、そこから徐々にチームの一体感を高め、決勝トーナメントでは日本とウェールズを退けて決勝に駒を進めた。

南ア代表フォワードだった現役時代から、堅実な戦いを志向してきたラガーマンだ。ハイパントを多用し、大きくて強力なフォワードが落下点になだれ込むシンプルなラグビーで勝ち上がった今大会の南アには、彼のカラーが濃厚に出ている。コルビやマピンピら快足バックスを走らせてトライを重ねることもできるあたり、一時期の南アに欠けていたスピード感も備わっている。チームの完成度は、エディーのイングランドに勝るとも劣らない。

「9番」「キック対応」「ゴールキック」が勝負の分け目

パスを出す南アのデクラーク(ウェールズ戦で)

勝負を分けるポイントは、3点あると私は思う。

一つ目は、背番号9番をつけて密集からの球出しを担うスクラムハーフの出来だ。両チームともバックスの防御に隙がなく、ほぼ互角の強力フォワード陣を擁するだけに、まずはスクラムやラインアウトからフォワードが突進を繰り返して少しでも前にボールを運び、防御にほころびが見つかればバックスへ展開するという戦い方になるだろう。

イングランドのヤングズ、南アのデクラークは、ともに動きがよく、優れた戦術眼を備えた9番だ。よりうまくフォワード陣の力を引き出し、80分間に数えるほどしかなさそうなバックスへ展開するチャンスを目ざとく見つけ出せるのは、果たしてどちらか。

キック攻撃への対処を、二つ目のポイントに挙げたい。イングランドはヤングズのほか、10番のフォード、12番のファレル、15番のデーリーにもいいキックがある。南アはデクラークがハイパントを上げる場面が目立つが、10番のポラード、14番のコルビ、15番のルルーも優れたキッカーだ。蹴り合いになる時間帯が、きっとたびたび訪れる。落下点での激しいボール争奪戦でミスを犯せば、それは失点や逸機に直結する。両チームの15番が中心となるキック捕球と蹴り返すキックの精度は、試合の流れを左右するはずだ。

そして、三つ目はゴールキックだ。防御の堅い両チームの対戦だけに、おそらくトライは1本ずつくらいしか奪えず、10点台同士で競り合うロースコアの勝負になる。そんな試合で勝利をたぐり寄せるのは、コンバージョン(トライ後のゴールキック)をしっかりと決め。貴重なペナルティーゴールを外さなかったチームだ。フォード(イングランド)とポラード(南ア)という名手の対決に注目したい。

イングランドのフォードがゴールキックを決める(ニュージーランド戦で)

大接戦を南アが制す?

延長戦にもつれ込んでも不思議はないと思えるほど、力の拮抗した顔合わせだ。私は、大接戦を南アが制すると予想するが、正直に言うとカン以外の根拠はない。

華やかなラグビーをするチームの顔合わせではないが、ラグビーという競技の奥深い魅力や迫力を感じられるような攻防を期待できる。ラグビーへの興味と関心が、W杯を通して一気に高まった今の日本で行われるのにふさわしい決勝カードと言うこともできそうだ。

《解説者プロフィル》

大久保直弥さん

大久保直弥(おおくぼ・なおや) 南半球の最高峰リーグ戦「スーパーラグビー」に、代表候補選手らを集めて日本から参戦している「サンウルブズ」で2018、19年シーズンにコーチを務めた。20年はヘッドコーチ(HC)に昇格して迎える。トップリーグ・サントリーの監督も経験、12年度はリーグ戦と日本選手権の二冠に導いた。現役時代のポジションはロックかフランカー。日本代表キャップ23を誇り、W杯2大会に出場した。1975年9月27日、神奈川県出身。身長1メートル88。

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