[大会総括]<2>キック戦術 主流に~進化する 防御崩す一手

空中戦でボールを奪い合う日本とアイルランドの選手たち(9月28日、静岡・エコパスタジアムで)=浦上太介撮影

南アフリカの司令塔ポラードが、ボールを高く蹴り上げると、大きく前進して自らキャッチした。2日のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会決勝の前半。トライにはならなかったが、世界トップのプレーに観客は沸いた。

今大会は、スタンドオフやスクラムハーフらが高く蹴るハイパントで、両チームの選手が空中で競り合うシーンが多く見られた。攻撃側が球を確保すればチャンスが生まれ、防御側に渡っても陣地を挽回できる。

前回の2015年大会まで、1試合あたりでキックを使う割合は減少傾向にあった。攻撃側が球を保持して攻め続けるスタイルが主流で、前回大会の日本もそうした戦いで南アを破るなど躍進した。

だが、今大会を制した南アは、ウェールズ戦の39%など、決勝トーナメントはいずれもボール支配率が相手を下回った。防御がより堅固となり、選手のフィジカル(身体的な強さ)はさらに強化されている。タックル後のボール争奪戦がより激しくなり、パスや走りで突き破るのは容易ではない。ただ陣地を挽回するためではなく、相手防御を崩すためのキックが増えた。

南アが「世界最高のフッカー」と呼ばれるマークスを後半から出場させるなど、出場登録23人の総合力で戦う傾向も強まった。イングランドのジョーンズ監督は準決勝の後、「試合終了時のメンバーを先に決め、先発の15人を選んだ」と明かし、「23人でプレーするスポーツに変わった」と話す。

今大会では、伝統的な強豪国・地域が属する「ティア1」と、中堅国の「ティア2」の実力差も縮まった。日本がアイルランド、スコットランドを破り、トンガはフランスに2点差で惜敗するなど、ティア1とティア2が対戦した試合は平均30・5点差と従来より低下。ジョーンズ監督は「ティア2の成長は、ラグビーにとっていいこと」と、底上げを歓迎する。

一方、退場処分となるレッドカードは8枚を数えた。15年の1枚、11年の2枚と比べ、突出した多さだ。大会前、国際統括団体ワールドラグビーが選手の安全を最優先とする方針を強調。また、序盤にワールドラグビーが「判定基準が一貫していない」と指摘し、判定がより厳しくなった。

脳しんとうの発生率が前回大会と比べて12%減少したというデータも公表された。頭部外傷の予防は最重要課題であり、「TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)」で危険なプレーをチェックするため、試合はたびたび中断した。

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