犬や猫の「看取りボランティア」

最期はぬくもりの中で

冨田大介撮影 
読売新聞オンライン
制作・著作 読売新聞
 「シェル、がんばったね。幸せだったかな」。今月5日早 朝、名古屋市のNPO法人「Famille(ファミーユ)」 のシェルターで、一匹の子猫が息を引き取った。  Familleが行っているのは高齢や重病で引き取り先の ない犬や猫を保護し、最期の時まで見守る「看取(みと)りボ ランティア」だ。白血病と腹膜炎を併発していたシェルは、泊 まり込みの女性スタッフの横で眠るように旅立った。  色とりどりの花とメッセージで埋め尽くされたひつぎ代わり の段ボール。室内に差し込んだ陽光が、命の灯が消えた小さな 体を包み込んだ。 写真と文 冨田大介 (2021年9月27日公開)

「大丈夫かな。瞳に力がなくなってきたかな……」。病気を併発し、呼吸の浅くなってきたシェルを見守る山下万穂さん(36)。6時間後、生後5か月の子猫は山下さんの横で静かに息を引き取った(9月4日午後10時35分、名古屋市の「Famille」で)

心配そうにシェルを見つめるFamilleの代表・熊崎純子さん(56)(右)と山下万穂さん(36)。シェルターで暮らす認知症のシバ犬・千畝も様子を見に来た(9月4日、Familleで)

白血病と伝染性の腹膜炎を併発した生後5か月の子猫・シェルがスープをつけた指をじっと見つめた(9月4日午後10時7分、Familleで)

多頭飼育崩壊の家から愛護センターを経て、Familleに引き取られたシェルは最期、人のぬくもりの中でその命を終えた(9月5日、Familleで)

ひつぎ代わりの段ボールはたくさんの花束とメッセージであふれた。亡くなったシェルの葬儀で最後の見送りをするFamilleのスタッフら(9月5日、Familleで)

Familleの老犬シェルターで穏やかに暮らすシバ犬の千畝(9月5日)

朝の食事の準備をするFamilleのスタッフら。Familleでは現在、老犬シェルターに8頭が暮らす(9月5日)

老犬シェルターで朝ご飯を食べさせてもらうメルル(9月5日、Familleで)

ボランティアに散歩に連れて行ってもらう認知症で盲目のシバ犬・千畝(9月5日、Familleで)

 一昨年度、全国の動物愛護センターなどに持ち込まれた犬と 猫は合わせて8万5897頭(環境省)。うち4万1948頭 が、民間の保護団体などの努力により、新しい家族の元に譲渡 されたが、高齢や病気で譲渡がかなわない多くの犬猫が殺処分 されている現実がある。介護が必要な高齢のペットを自ら施設 に持ち込む飼い主もいる。  人間の身勝手で奪われる命をなくし、最期は人の手のぬくも りの中で――。「看取りボランティア」は、そんな動物たちを 引き取り、その命が尽きるまで共に過ごす。「いつだって別れ はつらい。でも、残された時間は幸せに暮らしてほしい」。F amille代表・熊崎純子さん(56)は言う。

「ノムさん、足拭いておうち入ろうか」。看取りボランティアとして自宅で高齢のシバ犬を介護する佐藤明日香さん(45)。ノムさんは車いすを使っても歩行が困難になったが、「この子を通して、たくさんのことを学ばされています。最期の時まで、がんばって過ごしてほしい」と話す(9月10日、愛知県豊明市で)

佐藤明日香さんが看取りボランティアとしてシバ犬のノムさんを自宅に迎えて1年5か月。衰えていく姿に心は痛むが、精いっぱいの愛情を注ぐ毎日だ(9月10日、愛知県豊明市で)

佐藤明日香さんが看取りボランティアとしてシバ犬のノムさんを自宅に迎えて1年5か月。衰えていく姿に心は痛むが、精いっぱいの愛情を注ぐ毎日だ(9月10日、愛知県豊明市で)

 福岡県古賀市の「Azul(アスル)」では、飼い主から介 護を請け負った老齢犬の傍らで、看取りのために引き取った犬 たちが共に暮らす。Azulでも7月下旬、高齢の雑種・ふき が病気で息を引き取った。「早く治療を始められていたらもう 少し穏やかに暮らせたかもしれないのに」。代表の小野洋子さ ん(48)の胸にいつも去来するのは、一頭一頭のぬくもりと 葛藤だ。  時に笑い、時に泣いて、命とその最期に向き合う。「ゆっく り休んでちょ」。シェルを看取ったFamilleのスタッフ が書き込んだ言葉の中に悲しみとぬくもりがあふれていた。

柔らかな日差しに包まれるAzulの窓際に看取った犬たちの骨壺が並ぶ。「いつまでも忘れないよ」。忙しい中にも穏やかな時が流れていた(6月9日、福岡県古賀市のAzulで)

スタッフ(左奥)に抱かれる雑種のふきは7月下旬に旅立った。「一緒にいれば、日々愛情は増します。命と向き合いながら、いつも自問自答しています」。点滴や投薬、食事の介助など、24時間介護を行う看取りの現場に葛藤は消えない(6月10日、Azulで)

排せつの介助をしてもらうポインターのロッテンマイヤー。リハビリを重ねて歩けるようになり、Azulで元気に暮らす(6月10日)

飼い主から介護を請け負った犬たちと看取りのために引き取った犬たちが一緒にに暮らすAzul。食事の介助や投薬など、介護は24時間続く(6月10日)

リハビリを重ねて歩けるようになったが、自分で排せつのできないポインターのロッテンマイヤー(6月9日、Azulで)

食事の介助を受ける犬の周りに他の犬たちも集まってくる。慌ただしくも、にぎやかな時間がAzulに流れる(6月9日)

【撮影】読売新聞写真部・冨田大介
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