薄く、遠い魚群

サンマ不漁続く

冨田大介撮影 
読売新聞オンライン
制作・著作 読売新聞

 大衆魚として食卓で親しまれてきたサンマの不漁が続く。「全然いない。どこを探していいか、もうわからない」。9月上旬、約1200キロ沖合での漁から10日ぶりに花咲港(北海道根室市)に戻って来た第53進洋丸の小比類巻太二男漁労長(81)が唇をかんだ。130トン積める大型船だが、取ってきたサンマはわずか5トン。「60年間サンマ船に乗ってきたが、こんなことは初めてだ」=写真と文 冨田大介(2020年11月2日公開)

今年は入港するサンマ船も少なく、港には漆黒の闇が広がっていた。集魚灯の光に浮かび上がるサンマの少なさに漁師からはため息が漏れる。「探して探して、海の上をさまよい続けて、もう行く場所がないのさ…」(9月11日午前4時26分、北海道根室市で)

水揚げをする大型のサンマ船。水揚げを待つトラックの列も少なく、花咲港には例年のにぎやかさがない(9月9日、北海道根室市で)

「海水温が高い。外国船が多い。全然サンマがおらん」10日ぶりに花咲港に帰ってきた第53進洋丸の小比類巻太二男漁労長(81)は唇をかみしめる。「60年サンマ船に乗ってきたが、こんなことは初めてだ…」(9月9日、北海道根室市で)

水揚げを終えた男たちの表情は厳しかった。この日は6隻の大型船でわずか41トン。1日1000トン取れていた以前には全く及ばない。2時間後、漁師たちはまた海へ向かっていった(9月9日、北海道根室市の花咲港で)

全盛期には朝の4時に岸壁にずらりとサンマ船が並び、一斉に水揚げを始める船の集魚灯でまばゆいばかりだった花咲港。大不漁の今年、港は光を失っていた(9月10日午前4時16分、北海道根室市で)

おこぼれを目当てに港に姿を見せたキタキツネ。今年のサンマは漁獲が少なく、漁師たちは1匹残らずきれいに持っていくため、落ちている魚はほとんどない(9月11日、北海道根室市の花咲港で)

 例年なら毎日1000トン近い水揚げを誇る花咲港。船の集魚灯の光と数珠つなぎのトラックのライトでまばゆいはずの港も今年は光を失ったようだ。
 その頃、釧路では、中型サンマ船の漁師たちが船上で生活しながら、サンマがやってくるのを待ち続けていた。「8月の初めにここに着いて、1か月以上、1回も網を入れてない。漁場が遠過ぎて行けないよ」。岩手県大船渡市から来た漁師がため息をつく。

サンマの不漁が続く中、イワシ漁に切り替えた小型、中型のサンマ船も多い。「動いてないサンマ船も多いよ」キノネ水産の木根繁社長(83)が残念そうに話す(9月8日、北海道根室市の花咲港で)

水揚げから2時間後、次の航海に向かうサンマ船。「厳しいなんてもんじゃない。船員の安全が第一だけど、やっぱりサンマをたくさん捕ってきてほしい」と船を見送った船主は話した(9月9日、北海道根室市の花咲港で)

船倉に入ってサンマをすくう漁師たち。例年なら満杯で水揚げを繰り返さないと入れない船倉も、今年は最初から下りることができるほど漁獲が少ない(9月9日、北海道根室市の花咲港で)

霧の中、出漁するサンマ船。「今の漁場ではもう捕れなくなってきている。もう行くところがない…」サンマを探して、はるかかなたの公海での漁の見通しは暗い(9月9日、北海道根室市で)

厳しい水揚げが続くサンマ漁。この時期、花咲港には1日に1000トン揚がる日もあるサンマだが、この日は6隻の大型船でわずか41トンだった。サンマ漁をあきらめて母港に戻った小型、中型のサンマ船も多く、港には閉塞感が漂う(9月9日、北海道根室市で)

捕れたサンマの重さを量る市場の職員ら。今年は漁獲量の激減に加え、小さくやせたサンマが多かった(9月9日、北海道根室市の花咲港で)

サンマの漁獲が望めないため、イワシ漁に切り替えて操業する中型や小型のサンマ船。「イワシは取引価格がサンマに到底及ばない。捕りたくて捕っているわけじゃないけど、背に腹は代えられない」(9月11日、北海道根室市の花咲港で)

例年、朝の4時には岸壁にずらりとサンマ船が並び、一斉に水揚げが始まる花咲港。大不漁の今年、日の出前の市場前の岸壁はさみしかった(9月10日午前5時14分、北海道根室市で)

朝から晩までサンマの水揚げに追われたのは昔のこと。水揚げされたサンマやイワシを運ぶトラックの運転手たちもどこか手持ちぶさたの様子だ(9月11日午前4時55分、北海道根室市の花咲港で)

水産加工会社は加工用のサンマを確保できずにいた。『本来ならここに天井近くまで冷凍サンマが積み上がっているのに…』と永宝冷蔵の斎藤栄寿社長(34)。今でも例年の2割ほどしか確保できていない(9月8日、北海道根室市で)

例年であれば、生鮮サンマを全国に出荷するために朝から晩まで選別作業に追われているはずの永宝冷蔵の選別機は止まったままだった。「今年は異常」と斎藤栄寿社長はうつむく。サンマのシーズンも終盤。今年の稼働率は5割ほどだという(9月8日、北海道根室市で)

 先月10日、花咲港はまとまった水揚げで久々に沸いた。全国有数の水揚げ港の宮城県気仙沼でも、史上最も遅い記録を約1か月塗り替えてサンマが揚がった。
 漁獲が上向いてきたとはいえ、「今年は魚群が薄く、遠い。今後、飛躍的に水揚げ量が増えることはない」。9月末から10月中旬にかけて調査した国立研究開発法人「水産研究・教育機構」の担当者はそう話した。

7月30日に大船渡を出航し、8月1日に釧路に着いた漁師。係留した船の中で寝泊まりして、サンマの回遊を待ち続けていた。「8月末にあきらめて帰って行った船も多いよ」(9月11日、北海道釧路市の釧路副港で)

不漁で高値が続くサンマ。コロナの影響と提供できるサイズのサンマの確保が遅れたため、不漁だった昨年より、さらに1か月遅れて開催されたゆりあげ港朝市の「さんま祭り」には早朝から多くの人が並んだ(9月27日、宮城県名取市で)

不漁で高値が続くサンマ。コロナの影響と提供できるサイズのサンマの確保が遅れたため、不漁だった昨年より、さらに1か月遅れて開催されたゆりあげ港朝市の「さんま祭り」には早朝から多くの人が並んだ(9月27日、宮城県名取市で)

不漁で高値が続くサンマ。コロナの影響と提供できるサイズのサンマの確保が遅れたため、不漁だった昨年より、さらに1か月遅れて開催されたゆりあげ港朝市の「さんま祭り」には早朝から多くの人が並んだ(9月27日、宮城県名取市で)

ゆりあげ港朝市には北海道産のサンマが並んでいた。「今の時期だと、地元で水揚げされたサンマを売っているのに…」(9月27日、宮城県名取市で)

築地場外市場の鮮魚店では一時、サンマが1匹750円で売られていた。ようやく値段が下がってきたが、それでも高い「庶民の味」(10月26日、東京都中央区で)

【撮影】読売新聞東京本社写真部・冨田大介
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