元路上生活者ダンス集団

「新人Hソケリッサ!」

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制作・著作 読売新聞

路上の生きざま表現
元路上生活者ダンス集団「新人Hソケリッサ!」

ダンサー・振付家のアオキ裕キさんが率いる元路上生活者のダンス集団だ。
白髪交じりのアタマ、少し突き出た下腹。ダンサーとは言いがたい体つきのメンバーだが、その動きは独特の気迫を放つ。
写真と文 池谷美帆

現在、アオキさんを除く6人が元路上生活者だ。(左から)西篤近さん、アオキ裕キさん、渡辺芳治さん、平川収一郎さん、山下幸治さん、小磯松美さん、浜岡哲平さん

メンバーは流動的。急に来なくなる人もいるが、来る者拒まず、去る者追わず、だ

コロナ禍で久しぶりの公演を前に、リハーサルで踊る西さん

公演の会場へ向かうメンバー。「今でも本番は緊張する」と口をそろえる

日没後、ビルの屋上で行われた公演(横浜市南区の「アートスタジオアイムヒア」で)

主宰のアオキ裕キさん

山下幸治さん。現在、最年少のメンバーだ

渡辺芳治さん

平川収一郎さん

新メンバーの浜岡哲平さん

小磯松美さんは、最年長の73歳

西篤近さん

照明や音響など、きちんとした形で提供することにこだわる。「社会復帰プログラムではなく、アートとして提供している」とアオキさん

 バックダンサーなど一線で活躍してきたアオキさんは、01年、ダンス留学中に起きた米同時多発テロで人生観が変わった。帰国後、若者が路上ライブをする傍らで、おしりを出してごろんと寝ていたホームレスのおじさんが目に留まる。「こんな人たちと踊ったら、絶対におもしろい」。そう確信した。

 固く冷たい地面の上に寝て、「死」とも隣り合う、ホームレスの人たちの動き、心のままの表現は普通じゃなかった。


稽古に来る、来ないは自由。強制はしない。「やりたくないのに踊っても、求めるものにはならない」(アオキさん)

演出は独特だ。振り付けを教えるのではなく、言葉を提供して、そこからイメージを膨らませてもらう。アオキさんは「自由にというと、自由という振り付けをしてしまう。言葉でとっかかりを作っている」と話す

稽古に来ると、人と関われるのが嬉しいと話すメンバーも多い

大阪市西成区で行われたワークショップには地元のビッグイシュー販売員も参加した。販売員の一人は「最初恥ずかしかったが、楽しさが勝った」と嬉しそうに話した

大阪市西成区の路地を歩くメンバー。平川さんが初めて路上生活をしたのは大阪だった

 平川さんは、ソリの合わない父から逃げ、15歳で家出。住み込みで働いたパチンコ店を33歳でクビになり、大阪・西成の路上で寝るようになった。
 「人生疲れたな」。新宿の歩行者デッキで一人、寝ていた11年前。ビッグイシューの販売員仲間に誘われてソケリッサに。
そこではおじさんたちが奇妙な格好でうごめいていた。
「これダンスちゃうやろ」。でも皆、生き生きしていた。そのままのめりこんだ。

今も平川さんは毎日、都心の路上に立って雑誌を販売する。踊っているときとは違う視線が、時に冷たく刺さる

決まりはないが、裸足で踊るメンバーが多い。「裸足で踊るほうがしっくりくる」と渡辺さん

10月21日、横浜市で行われた「路上の身体祭典 H!」新人Hソケリッサ!横浜/東京路上ダンスツアー。西さんはダンス経験があるが、「前は客に向けて踊っていたけど、今は自分の踊りと向き合うようになった」

「どう見られるかは考えないようにしている。自分の考え、思ったことに沿って踊る」(小磯さん)

「先生(アオキさん)に、良くなろうとしている自分じゃなくて、未完成でもいいと言われたことがうれしかった」(山下さん)

「路上生活で一度何かを捨てた体には覚悟がある。自分にはないものを持っている」(アオキさん)

「ソケリッサにいると色んな人と出会える。そこがいいなと思って、今までやってこられている」(渡辺さん)

「みんな色んな理由があって路上生活をしている。それを恥ずかしいとは思っていないが、偏見があると思う。ソケリッサをみて見方が変わって欲しい」(浜岡さん)

「ソケリッサは自分の力になっている。ひとりぼっちで突っ立ってると、いらんこと考えてしまうから」(平川さん)

メンバーは皆、様々な思いを持って、人前に立つ

公演を終え、観客から声をかけられる。「ずっと認められたいと思っていた。でも集中して踊りきったときに、それを超える達成感を感じた」と山下さん(左)は話した

観客からの大きな拍手に、一礼した

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