すべて止まったコロナ社会、「戻すもの」と「戻さないもの」…科学は「最善の努力」を助言

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◆…大阪大名誉教授 小林傳司氏 65…◆

 人類は近代以降、自然科学の知見を生かした対策を講じることで、様々な困難に立ち向かってきた。目に見えない正体不明の新型コロナウイルスがもたらす災禍もしかり。だが、科学と対策を決定する政治、それを受け入れる社会との関係はどこかいびつだ。その理由は何なのか。科学技術社会論が専門の小林傳司・大阪大名誉教授に聞いた。(科学部 野依英治)

科学と政治の関係がうまく機能しない、新型コロナ禍の対応

 科学は、人間社会が手にした最強の知的道具です。それ故に、新型コロナをはじめとする新興感染症や2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故のような有事の際には、科学者の知見を、被害拡大を防ぐ政策判断に反映させようと試みられてきました。そこには、常に難しい問題が潜んでいます。

コロナ対応で学生の姿が途絶えたキャンパスを歩く。科学の不確実性への理解はなぜ進まないのか。「最大の要因は教育。高校までの理科は必ず正解があり、100点満点が取れる科目。科学の本質を学べないシステムなんです」(大阪大豊中キャンパスで)=東直哉撮影
コロナ対応で学生の姿が途絶えたキャンパスを歩く。科学の不確実性への理解はなぜ進まないのか。「最大の要因は教育。高校までの理科は必ず正解があり、100点満点が取れる科目。科学の本質を学べないシステムなんです」(大阪大豊中キャンパスで)=東直哉撮影

 科学者が客観的な事実やリスク評価を示す役割を担い、それをもとに政治が基準を定めたり、判断を下したりするというのが、通常の科学と政治との関係です。こうした分業でうまくいく事例はたくさんあります。ところが、うまく機能しないタイプの問題が噴出してきました。古くは原発の安全性をめぐる議論であり、今回の新型コロナ禍への対応なども、その典型です。

 「原発の安全装置が全部壊れたらどうなるか」。こんな問いに、専門の工学者であれば、「深刻な事故が起きる」と皆が言い切れます。起こる確率が極めて低いという点でも意見は一致するでしょう。ところが、この低確率の事態について、さらなる対策を講じるべきか否かとなると、見解が分かれてしまいます。経済的合理性や社会がリスクをどこまで許容するかなど、さまざまな観点からの検討結果を加味して、判断しないといけないからです。

 新型コロナの場合はどうでしょうか。感染防止という観点だけでいえば「濃厚接触を断つしかない」と、専門家の考えは極めて明瞭です。しかし、いつまで自宅で巣ごもりを続けるべきなのか、感染リスクをある程度許容しながら経済活動を維持すべきなのか。政治と交わる境界領域で何を重視するのか、科学だけでは答え難い「トランス・サイエンス」の問題と言えます。

トランス・サイエンス …科学技術が生活に定着した現代社会では、真理を追究する科学が政治や社会と切り離されなくなり、互いに交わる領域が大きくなってきた。米国の原子力工学者アルビン・ワインバーグは1972年、こうした領域を「トランス・サイエンス」と呼び、ここで生じる問題については、科学だけでは解決できないと論じた

最終局面の判断は、政治が引き取り、科学との境界をはっきりさせること

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1398192 0 科学・IT 2020/08/09 09:00:00 2020/08/09 09:24:15 2020/08/09 09:24:15 新型コロナウイルスの影響でリモート授業が導入され、学生の数が減ったキャンパスを歩く大阪大名誉教授の小林傳司氏(7月8日、大阪府豊中市の大阪大学豊中キャンパスで)=東直哉撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200803-OYT1I50042-T.jpg?type=thumbnail

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