「がん」になりにくいゾウ、20組の「守護者」所有…人間には1組だけ
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人間やマウスなどの哺乳類だけでなく、鳥類や
ピートの逆説

がんは、様々な原因によってDNAに傷を負った細胞が、無制限に増殖することで生じる。細胞数が多いほど、長く生きるほど、がん化の確率が高まるはずなのに、ゾウのように大型で長命の動物は、めったにがんを発症しない。この問題を提起した英オックスフォード大の医療統計学者リチャード・ピート教授にちなんで「ピートの逆説」と呼ばれる事実だ。
逆説の解明に挑んだ米ユタ大のジョシュア・シフマン教授らは、アフリカゾウのゲノム(全遺伝情報)を調べた結果、ゾウはP53という「がん抑制遺伝子」を20組も持っていると、2015年に発表した。
がん抑制遺伝子は、細胞がむやみに増えないように制御する遺伝子だ。P53は、がん化を防ぐため、様々な遺伝子に命令を出すので、「ゲノムの守護者」とも呼ばれる代表格でもある。DNAの傷を修復させたり、損傷の多い細胞をアポトーシス(自死)に追い込んだり、細胞増殖の周期を止めたりする。
人間は1組しか持っておらず、P53遺伝子自体が傷つくと、抑制機能が失われてがんになりやすくなる。だがゾウのように20組も持っていれば、すべてが傷つく可能性は低い。シフマン教授らは、P53の数が多いほど、異常細胞を自死させる効率が良くなることも突き止めている。
なりにくい「ほかの生物」
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