[New門]もうSF映画ではない?「人工冬眠」

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[New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「人工冬眠」。

 宇宙船内のカプセルが静かに開くと、長い眠りから覚めたクルーが、窓の外に浮かぶ惑星を眺めてつぶやく。「もうすぐ到着だ」――。SF映画でおなじみの人工冬眠が、日本発の研究で一歩実現に近づいた。未来への扉を開ける夢の技術だが、一方で社会や人間関係を変容させる面もはらんでいるようだ。

脳に「スイッチ」マウスで発見

 居眠りしそうな時、ほっぺたや手をつねって眠気を払う人も多いだろう。ところが、筑波大などの研究チームは、マウスの脳の一部を刺激することで、逆に冬眠のような状態に導くことに成功し、6月に英科学誌ネイチャーで発表した。

 論文によると、35度以上だった体温は約25度で安定し、心拍数も約4分の1に減るなど、冬眠中の動物に似た状態となった。脳を刺激する薬の効果が切れると自然に目覚め、健康にも異常はなかったという。

 冬眠へといざなうスイッチのような脳神経は人にもあるそうだ。研究を主導した筑波大の桜井武教授は「人に応用できれば、様々な分野に革命的な進歩をもたらすだろう。30年後の実現可能性は50%以上ある」と話す。

「低体温療法」既に 瞑想への応用も

 応用が最も期待されるのは医療だ。頭に大けがをした人や、血管が詰まって脳が酸素不足に陥った人の体温を32~34度に下げ、脳損傷の進行を抑える「低体温療法」は既に実現している。人工冬眠で体温や体の機能をさらに抑えられれば、救命率がぐんと上がると考えられている。

 天才無免許医ブラックジャックが活躍する手塚治虫の漫画には、難病に苦しむ青年の妻に、旧ソ連で極秘開発されたという人工冬眠装置を勧めるエピソードがある。天才でも治せない患者を未来の医療に託すためだ。

 このほか、到着に何十年もかかる遠い宇宙への旅が可能になることも忘れてはいけない。米国では、鼻から冷却剤を入れて冬眠状態にする研究に、米航空宇宙局(NASA)などが大まじめに取り組んでいるという。

 もっと身近な分野としては、「瞑想めいそう」への応用も考えられる。脳が安らぎ、精神的な安定をもたらす効果があるかもしれない。仕事で強いストレスを感じた後は、確かにしばらく冬眠してみたいような気もする。

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1399288 0 科学・IT 2020/08/10 05:00:00 2020/08/10 08:56:28 2020/08/10 08:56:28 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200809-OYT1I50042-T.jpg?type=thumbnail

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