山が豊かになったら…「高根の花」マツタケ、ますます縁遠く

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[New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「マツタケ」。

 

 秋の味覚の代表格であり、庶民にとっては「高根の花」でもあるマツタケ。国際自然保護連合(IUCN)が7月、絶滅危惧種に指定し、ますます遠い存在になった。減った理由は数あれど、意外にも山が豊かになったことが大打撃になったようだ。

万葉から愛され…いまや絶滅危惧種

 「高松のこの峰もに笠立てて満ち盛りたる秋ののよさ」(作者不詳)。7~8世紀頃に詠まれた4500余りの歌を収めた日本最古の歌集・万葉集の一首だ。山も狭しとばかりにマツタケが群生し、香りが一面に漂う当時の情景が目に浮かぶ。

 香りは古くから日本人をきつけ、室町時代に起きた応仁の乱(1467~77年)の最中も、公家たちがマツタケ狩りに興じていたとの記録が残るという。

 かつてはごく身近な食材だった。三重県史編集委員を務めた吉村利男さん(72)が大正初期の記録を調べたところ、当時は1キロ約15銭でシイタケの方が8倍も高かった。吉村さんは「自分も若い頃はマツタケ狩りを楽しんだが、山の様子が大きく変わってしまった」と振り返る。

落木、枯れ草増え

 マツタケは欧米やアジアに広く分布するが、IUCNの推計によると、この50年で生育に適した場所が世界で30%以上減ったという。特に日本は深刻で、高度成長期に入った昭和中期から収穫量が急減し、昨年は約14トンとピーク時(1941年)の0.1%近くまで落ち込んだ。

 理由としてはまず、開発に伴う松林の減少や、松食い虫による松枯れが挙げられる。マツタケは、アカマツなどの根と絡み合うように菌糸を伸ばし、栄養をもらう代わりに水分やミネラルを与える共生関係にあり、松林はまさに生命線だ。腐った木に生えるシイタケなどとは異なり、生きた木と共生して育つ性質が人工栽培の実現を阻み、減少に拍車をかけている。

 だが、実は「主因」は別にあるそうだ。東京農業大の江口文陽教授(キノコ学)は「里山に人の手が入らなくなったことが大きい」と指摘する。薪や枝葉、草が燃料や肥料として使われなくなり、落木や枯れ草が積もって土が肥え、やせた土を好むマツタケが減ったという。人の手が入って絶滅に向かうことは多いが、逆のケースと言える。

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1538676 0 科学・IT 2020/10/11 05:00:00 2020/10/11 09:09:01 2020/10/11 09:09:01 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201010-OYT1I50094-T.jpg?type=thumbnail

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