【独自】土砂災害、AIで迅速特定…5人で5日→5分に
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地震や大雨による土砂災害直後の衛星画像を人工知能(AI)で分析し、被災地を迅速に特定する技術を、航空測量大手「パスコ」(東京)が開発した。正答率は9割超で、熟練技術者に匹敵する精度という。広域災害時に最優先で救助・救援が必要となる地域を特定し、速やかな活動に役立てる。

同社は、2018年の西日本豪雨や、東日本で河川氾濫が相次いだ19年の台風19号、今夏の九州豪雨などの被災地を撮影した1万枚以上の衛星画像を用意。ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる手法で、土砂災害の画像上の特徴や共通点をAIに学習させた。
システムの精度について、18年9月の北海道地震(最大震度7)で土砂災害が多発した山間部(面積約200平方キロ・メートル)の衛星画像を使って検証。広域に点在する被災地と、畑や道路などを画像で見分ける作業は、熟練技術者でも5人がかりで5日程度かかるが、AIは土砂災害の場所を5分ほどで特定することに成功した。正答率は93%だった。
主に可視光を観測する人工衛星を使うため、夜間や雲が多い時はやや時間がかかる場合もあるが、最短2時間で衛星データの受信から、AI分析、結果の提供までを行えるという。
同社は分析結果を国や自治体に提供し、迅速な救助・救援活動につなげたい考えで、下村博之・災害対策部長は「広域の被害が想定される南海トラフ地震などで活用できるよう、さらに誤判定を減らしていきたい」と話している。
北海道地震で土砂災害が多発した山間部の衛星画像。AIが判定した被災地を赤色で示している(北海道安平町、中央は貯水池)