「反ニュートリノ」を初検出…南極点近くの氷の層に埋め込んだ観測装置で
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超高エネルギーの素粒子「反ニュートリノ」を、南極の大規模観測装置「アイスキューブ」で初めて検出したと、千葉大などの国際チームが発表した。高エネルギーの天体現象や謎の多い反ニュートリノの性質解明につながるといい、論文が11日、英科学誌ネイチャーに掲載される。
アイスキューブは、南極点近くの厚さ約2800メートルの氷の層に5160個のセンサーを埋め込んだ装置。宇宙から飛来するニュートリノや反ニュートリノがまれに氷にぶつかって出る特殊な光を検出する。日米など12か国が観測に参加している。
吉田滋・千葉大教授らは2016年に検出した光の量や軌跡などのデータを詳しく分析した。その結果、目に見える光の2000兆~3000兆倍という極めて高いエネルギーを持つ反ニュートリノが、電子に衝突した時にしか起きないまれな現象が起きたことを確認した。発生源は不明だが、銀河系外から飛来したとみられるという。
この現象は、米国のノーベル物理学賞受賞者シェルドン・グラショー博士が1960年に提唱し、「グラショー共鳴」と呼ばれる。今回ほどの高エネルギーの反ニュートリノを加速器などで人工的に作ることはできず、未確認だった。
井上邦雄・東北大ニュートリノ科学研究センター長の話「観測例を増やして多くの反ニュートリノを識別できれば、巨大ブラックホール同士の衝突などの天体現象の解明に近づくだろう」
◆反ニュートリノ=ニュートリノと質量(重さ)が同じで、ペアの関係にある「反粒子」。通常の粒子と反粒子は電気的な性質が逆さまだが、ニュートリノと反ニュートリノはともに電気を帯びていないため、見分けるのが難しい。