ダニの写真撮影が趣味「ちっこい穴にギチギチ」、投稿したら…新種だった
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法政大学の動物分類学者・島野智之教授(52)が、偶然目にしたツイッターの投稿写真をきっかけに海岸性ダニ類の新種を発見した。同大によると、ツイッターを通じた動物の新種発見は世界で初めて。ツイッターにちなみ、「Ameronothrus twitter」(アメロノトルスツイッター、和名はチョウシハマベダニ)との学名が付けられた。

島野教授が投稿を見たのは2019年5月。投稿したのは、ダニの写真を撮るのが趣味という千葉県松戸市の会社員、根本崇正さん(35)だった。
根本さんは同月の大型連休中、家族で同県銚子市の港に釣りに行った際、防波堤にあった車止めのひび割れにダニの集団を見つけた。1匹の大きさはわずか0・5ミリ程度。特殊なレンズ付きのカメラで撮影するとツイッターに写真を投稿し、「ちっこい穴にササラダニの一種がギチギチに詰まっています。乾燥を耐え

その後、たまたま写真を見た島野教授は驚いた。「確かにササラダニ類だが、背中に特徴的なしわがあって、既知種と形態が微妙に異なっている。もしかしたら新種じゃないか」
実はこの時、後に新種とわかるササラダニ類を研究している最中だった。島野教授は早速ツイッターで根本さんに連絡を取って詳しい撮影場所を聞くと、現地へ足を運んだ。だが目視では見つけられず、ひとまず周辺の砂を持ち帰った。
その後、1匹ずつ砂粒から引き離して詳しく観察し、海外の研究者と共に新種と確認。3月22日、動物分類学の国際学術誌「スピーシーズ・ダイバーシティー」で論文を発表した。
ササラダニ類は人に害を加えることはなく、落ち葉や藻類などを餌とする。豊かな自然環境の指標としても知られている。島野教授は「銚子の海岸が未発見の種を育んでいた。SNSの普及で今後は新種の発見スピードが加速するかもしれない」と期待する。一方の根本さんはダニ関連の論文を読み込む日々だ。「役に立ててうれしい。今度は自分で新種発見の論文を書いてみたい」と話している。
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新種発見を巡っては昨年、欧州の研究チームがツイッターに投稿された写真から節足動物のヤスデに寄生する新種の菌を発見。こちらもツイッターにちなんで、学名に「twitteri」の文字が入っている。
新種の研究に詳しい京都大学の中野隆文准教授(動物分類学)は「SNSの普及により、特に研究者の少ない分野では大きな発見につながる確率が高まっている。誰もが生物の多様性を記録し、未来に伝えていくチャンスを持っている」と話している。