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ロボットやAIとの結婚、認められる?…いずれ起こる「人格」論争

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 人工知能(AI)の研究開発は、はやり廃りを繰り返してきた。だが、2000年代に始まった第3次ブームは、当分おさまりそうにない。深層学習(ディープ・ラーニング)という技術を基盤とする今の人工知能は、囲碁・将棋のプロ棋士やクイズ王らを負かした後も、さまざまな分野から社会に浸透し始めている。
 生命倫理を長く専門にしてきた(ぬで)島次郎氏は、研究の視野を広げ、科学技術が人間にもたらす意味を、過去、現在から、遠い未来まで見通して考察しようと試みている。科学技術によって生み出された人工知能を、いかに使うべきか。それは、人間の知性への重い問いかけになると説く。(編集委員 芝田裕一)(●は木へんに勝の旧字体)

診断や治療、医療をどこまでゆだねるか

「企業の研究所にいた頃、隣のこの公園をよく散歩したものです」。研究所はなくなり、跡地には大学の学生寮が立っている(東京都町田市のかしの木山自然公園で)=鈴木竜三撮影
「企業の研究所にいた頃、隣のこの公園をよく散歩したものです」。研究所はなくなり、跡地には大学の学生寮が立っている(東京都町田市のかしの木山自然公園で)=鈴木竜三撮影

 「対決の時代を超えて、(人工知能との)共存という時代に入ったのかなと思います」。昨年7月、将棋の棋聖位を獲得した藤井聡太さんが、記者会見で残した言葉が印象的でした。

 人工知能と人間との関わりは、勝つか負けるかというイメージで語られることが多かったのですが、人工知能ソフトを駆使して腕を磨く藤井さんの世代は、そんなイメージを覆したのです。将棋だけでなく私たちの生活全般で、人工知能はなくてはならない存在になってきています。

 私が人工知能に関心を抱いたきっかけの一つは、医療への影響が議論されるようになったことです。画像診断や薬の選択などに人工知能を用いる臨床研究が進められていますが、医療をどこまで機械にゆだねていいのでしょうか。

 診断や治療方針の決定に人工知能を利用する場合も、最終判断は人間が行う。その原則さえ貫けばいいと考えます。人工知能が関与する部分をブラックボックスにしてはいけません。医師には、使用する人工知能の働き方を理解し、なぜそうした判断に至ったかを常に知っておく責任が生じます。

 自動車の完全自動運転については、かなりの部分まで人工知能に任せてもよいと思います。私の理想は、人工知能が操縦する車を呼び出すと、目的地まで運んでもらえるような車社会の到来です。日本の自動車メーカーにも、早期実現を目指して実証的な実験に取り組んでほしいものです。

 もし自動運転車が事故を起こしたら、賠償責任は誰にあるのでしょうか。欧州連合の議会では、人工知能を備えたロボットに法人格を与え、責任ある存在として認めようという提案がなされています。

 革新的なアイデアなのですが、すんなり通りそうにありません。欧米では、人工知能やロボットに「人格」を認めることに抵抗を感じる人が少なくないからです。

人間の優位性が脅かされる…欧米特有の文化的背景

 19世紀の英国の作家メアリー・シェリーが書いた小説「フランケンシュタイン」は、主人公である科学者がつくりあげた人造人間が怪物と化して、主人公の親しい人々を殺したあげく、本人も破滅させてしまう物語です。

 欧米人特有の感情は、この小説にちなんで「フランケンシュタイン・コンプレックス」と呼ばれています。自分たちの作った人造人間(ロボットや人工知能)に、創造主である人間の優越性が脅かされ、取って代わられるのではないかという恐れに由来するもので、人間は神の創造物だとする一神教の文化に根ざす心理とみることができます。

 ロボットについて考え始めた2000年頃、フランスの新聞記事を読み、欧州の人々がなぜ社会へのロボット導入に抵抗を示すのか、不思議に感じたものですが、欧米人の否定的態度の背後にこの心理があると考えれば理解できます。

 私は、電子頭脳を搭載したロボットが活躍する漫画「鉄腕アトム」に夢中になった世代です。日本人がロボットに好意的なのは、こうした漫画やアニメに親しんだおかげだと言う人がいますが、そうではありません。

 日本人は、一神教の影響を強く受けた文化を経験しておらず、フランケンシュタイン・コンプレックスから自由でいられるからなのです。

 人工知能がいずれ人間の知性をしのぐという「人工知能脅威論」も、このコンプレックスから来ていると考えられますが、本当に脅威となりうるのでしょうか。

 

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2053642 0 科学・IT 2021/05/15 10:31:00 2021/05/15 10:31:00 2021/05/15 10:31:00 「あすへの考」、生命倫理政策研究会共同代表、橳島次郎氏(東京都町田市の「かしの木山自然公園」で)=鈴木竜三撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210511-OYT1I50036-T.jpg?type=thumbnail

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