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奇岩・巨岩が和歌山に集中、1400万年前の巨大噴火で出現した「超巨大カルデラ」に深く関連

 和歌山県内には全国的に有名な奇岩や巨岩が多く、地域の観光資源や信仰の対象にもなっている。特徴的な形をした岩の数々はどうやってできたのか。その成り立ちと、それらの岩を地域おこしにつなげようとする住民らの取り組みを追った。(大田魁人)

 今月上旬の午前4時半頃、串本町の国道42号沿いから海岸を眺めると、約850メートルにわたって立ち並ぶ大小様々な岩の影が朝日に照らされて浮かび上がった。国天然記念物「橋杭岩」だ。平日だったが、20人近くの観光客らが幻想的な光景に見とれ、写真を撮っていた。

 県南部の熊野地方は、橋杭岩を始め、奇岩や巨岩が特に多い。新宮市の神倉神社には、538段の石段を上りきった先に、ご神体として祭られている「ゴトビキ岩」がある。高さは約11メートル。しめ縄が巻かれた巨岩が社殿の上にせり出すさまが目を引く。古座川の一枚岩は、高さ100メートル、幅500メートルの大きさが圧巻だ。いずれも観光スポットとして人気が高い。

 「熊野地方の奇岩や巨岩は、かつて紀伊半島に存在した火山活動と深く関連している」。串本町潮岬にある県立施設「南紀熊野ジオパークセンター」の副主査研究員、福村成哉さん(31)はそう語る。

 約1400万年前、熊野地方で火山の巨大噴火があった。地下のマグマが大きく減り、東西約23キロ、南北約40キロにわたって地面が陥没。「熊野カルデラ」と呼ばれる円形にくぼんだ地形ができた。

 カルデラの周辺や内側に噴出したマグマは地表や地中で冷え固まって「火成岩」となった。熊野の巨岩や奇岩の多くは、その時にできた火成岩であることが成分分析などから分かっている。その後、長い年月をかけて大地の隆起や浸食、風化が起き、それぞれの岩が変化を重ねて今、地表に姿を見せている。

 福村さんは、紀伊半島での過去の火山活動について研究を進めている。「超巨大カルデラが出来るほどのマグマが発生した理由は、はっきりとは分かっていない。まだまだ研究の余地はある」と意欲を燃やす。

 巨岩や奇岩が信仰の対象になったり、観光名所となったりするのは、熊野地方に限らず、世界中でみられる。なぜ人は引きつけられるのだろうか。

 日本宗教民俗学会の会員で、巨岩や奇岩の信仰に詳しい吉川宗明さん(38)は「かつて巨岩は、人間の力では動かせなかったことが信仰につながった」とみる。

 吉川さんによると、「古事記」などの古文書には、道をふさぐ巨大な岩を神に祈ることで動かそうとしたり、割ろうとしたりする記述があるという。「人間の力ではどうにもならず、時がたっても変化しない岩そのものが『超越的な存在』とみなされ、次第に信仰の対象になっていったのでは」と推測する。一方で、「現代の日本では、信仰心が薄れる反面、『パワースポット』のような流行に形が変わり、観光名所としての人気が高まっている側面がある」と指摘する。

 県内では、地元の奇岩や巨岩を地域おこしに生かそうという動きも活発化している。吉川さんは「岩はなにも語ってくれない。だからこそ、人の数だけ岩の見方があり、それぞれの楽しみ方ができる。多様な可能性を秘めている」と力を込める。

 橋杭岩やゴトビキ岩、一枚岩などの熊野地方を代表する奇岩や巨岩は、南紀熊野ジオパークの「ジオサイト」の一つだ。ジオサイトとは、大地の成り立ちが分かる地質や地形がある場所などを指す。同パークには、これらの岩や島、半島、滝、温泉など全部で107か所のジオサイトがある。ホームページに一覧が掲載されている。

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