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1967年の論文「あれが私のホームラン」…CO2の倍増で気温2度上昇、初めて示す

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 真鍋さんをかつて取材した元読売新聞科学部記者で、現東京大特任教授の保坂直紀さん(62)が本紙に寄稿した。

  ◇

世界地図を指さす真鍋さん。コンピューターによる地球気候モデルを開発した(2000年撮影)
世界地図を指さす真鍋さん。コンピューターによる地球気候モデルを開発した(2000年撮影)

 小柄で気さく。気象の話になると、少し早口になってジェスチャーたっぷりに楽しげに語り続ける。真鍋さんは、考古学的な学問だった気候学の研究を、高速コンピューターを駆使する先端科学の土俵に乗せる 先鞭せんべん をつけた。

 地球温暖化を始め将来の気候を予測するには、コンピューター計算以外には実質的に方法はない。8月に公表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第6次評価報告書も、世界中の科学者がコンピューター予測した研究成果を集約したものだ。

 大気にとって、海は熱源になる。したがって、大気と海が熱や水蒸気をやりとりする過程を計算に組み入れる「大気海洋結合モデル」は、今では常識だ。その結合モデルを、海洋物理学者と協力して1969年に論文として世界で初めて発表した。

 真鍋さんは1958年に大学院博士課程を修了して渡米した「頭脳流出」組の一人だ。当時の米国ではコンピューター開発が猛烈な勢いで進められていた。その最先端のコンピューターをふんだんに使う機会に恵まれ、世界に先駆けた研究成果を生み続けた。

 近年は熱波や記録的な豪雨など、災害に結びつく気象の異変が世界の各地で顕在化している。温暖化は、単に気温が上がるだけではなく、降水や海面水位にいたるまで地球システムの全体を変えてしまう現象であることが明らかになってきた。もう地球は持ちこたえられない。人々がそう気づいた今、それに科学的な裏付けを与え続けてきた科学者への授賞決定は、まさに時宜を得たものといえるだろう。

 ただし、真鍋さんは複雑なコンピューター計算にのめり込む科学者ではない。本人が「あれが私のホームラン」と振り返るのは、大気を地上から上空まで1本の柱とみなした1967年の簡潔な論文。これで、二酸化炭素の倍増で地上の気温が2度あまり上昇することを、初めて示した。

 気象は複雑な現象だ。そのままコンピューターでシミュレーションしても、本質は分からない。大切なのは、複雑さに惑わされずに何が本質なのかを見極めること。その点を常に意識していたからこそ、ノーベル賞につながる研究の系譜を築くことができたのだろう。

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2421311 0 科学・IT 2021/10/06 05:00:00 2021/10/06 07:38:12 2021/10/06 07:38:12 地球フロンティア研究システム地球温暖化予測研究領域長・真鍋淑郎氏。米海洋大気局地球流体力学研究所上席気象研究員、米プリンストン大学客員教授などを歴任した。2000年3月9日掲載 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/10/20211006-OYT1I50029-T.jpg?type=thumbnail

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