【独自】ダム緊急放流回避にAI活用、15日先まで雨量予測し空き容量確保…政府が導入検討

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 水害につながる恐れがあるダムの「緊急放流」の回避を目指すシステムが開発され、政府が導入を検討していることがわかった。人工知能(AI)で15日先までの雨量を予測し、台風などの襲来前にダムの空き容量を確保する仕組みで、既に約40のダムで実証実験が進んでいる。政府は2022年度まで行われる実験の成果を踏まえ、全国のダムへ普及させたい考え。

 ダムは発電や農業用などとして広く利用されるほか、水害を避けるため川の水位調節の役割も担う。大型の台風などで貯水量が急増すると予想される時は「事前放流」して空き容量を増やすが、台風のコースがそれるなどして雨が少ない「空振り」の場合は農業用水の不足や発電量の減少を招き、経済被害に直結する。

 一方、事前放流で空き容量を確保できずにダムがいっぱいになった場合は増水中に緊急放流することになり、下流で水害が発生する恐れもある。管理するダムで緊急放流を行った水資源機構(さいたま市)の担当者は「空振りなら水不足で住民らに大きな迷惑をかける。一方で緊急放流も避けなければならず、事前放流の判断は難しい」と明かす。多くのダムでは事前放流は3日半先までの気象庁の雨量予測で判断されており、最大2日間ほどしか実施されていない。

 新たなシステムは京都大や日本気象協会などのチームが開発した。チームは約12年分の全国の雨を分析。15日先までの1キロ・メートル四方ごとの雨量をAIで51パターン予測し、ダム水位の見通しをより長期で示せる仕組みにした。各ダムの管理者は予測雨量の上限と下限をパソコン端末上で確認でき、事前放流のタイミングや量をより細かく判断しやすくなった。

 地球温暖化による気象災害が相次ぐ中、政府は18年、最先端の技術を防災・減災に生かす5か年計画を始め、チームの研究を計画に盛り込んだ。システムの実証実験は水資源機構や電力会社などが管理する利根川、淀川水系などの約40のダムで昨年から進んでいる。

 京都大防災研究所の すみ 哲也・水資源環境研究センター教授は「緊急放流を回避するには、早い段階からの事前放流を行う技術が不可欠だ。今後は予測が難しい梅雨前線などにも対応させ、水力発電の効率を上げるなど水資源の有効活用も目指したい」と話している。

 国土交通省によると、20年4月時点で国内のダムは全1470基あり、6割が農業用などの「利水ダム」、4割が利水用にも防災用にも使われる「多目的ダム」だ。川の水位調節に使える容量は全ダムの180億立方メートルのうち55億立方メートルと3割にすぎない。この容量を増やすため政府は同月、事前放流の手引を作成、水害対応力強化を図っている。

  ◆緊急放流= ダムで流入量とほぼ同量の水を放流する操作。台風などで容量の限界を超えたダムが決壊・破損する事態などを避けるために行うが、下流域では水害の恐れが高まる。2018年の西日本豪雨では8ダムで行われ、愛媛県を流れる肱(ひじ)川流域で8人が死亡した。

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