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魚が人の50倍の速さで傷を治す仕組みの一部を、山口大大学院創成科学研究科の岩楯好昭教授(生物物理学)らの研究チームが解明した。傷を塞ごうとする細胞を誘導する「リーダー細胞」が増えることで、修復範囲が広がる様子を確認した。研究チームは、将来的に治療期間の短縮や傷痕を残さない手術方法の開発への応用が期待されるとしている。(小林隼)
研究成果は4月、米科学雑誌「米国科学アカデミー紀要」に掲載された。

岩楯教授によると、魚や人の皮膚が傷つくと、「リーダー細胞」を先頭に、上皮細胞が集団で傷を塞ごうとする。人の場合、特定のリーダーが後続を引っ張り、アメーバ状に広がる一方、魚では、リーダー同士が数珠つなぎになって円状に拡大することは分かっていたが、拡大の過程については不明だった。
研究チームが魚のウロコの修復過程を特殊な顕微鏡で観察したところ、後続の細胞がリーダー同士をつなぐケーブル状の繊維を引きちぎって割り込み、そのままリーダーとして働いていることを発見した。こうした仕組みでリーダーを増やすことで傷を覆う範囲を増やし、魚の治癒を速めている可能性があるとしている。
今回は速さの秘密を追究したが、次の段階では、傷をきれいに治す点に着目し、研究を進める。細胞が円状に等間隔で広がる原理を明らかにできれば、傷痕を残さない治療法の開発につながる可能性があるという。今月10日、山口大で記者会見した岩楯教授は「人の治療の発展につながるよう今後も研究を続けたい」と意気込みを語った。