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[東日本大震災10年 秘話]<4>孤立集落、山から水を引く…恐るべき「田舎の底力」

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 東日本大震災のボランティアとして、宮城県石巻市の市街地に入った井上岳一さん(51)は4月、地元の団体から相川地区での活動を依頼された。唯一の道路が寸断され、1か月も満足に支援物資が届いていなかった地域という。

 元々は、旧十三浜村の一集落。昭和期に町になり、2005年の大合併で石巻北端の市域になった。日本総研で地域社会について研究する井上さんは、孤立した小さな集落の苦境を想像するだけで胸が痛んだ。物資もなく、ひどい状況に陥っているに違いないと。

燃料にするためのがれきが積まれた避難所のグラウンド(2011年4月18日)=住民提供
燃料にするためのがれきが積まれた避難所のグラウンド(2011年4月18日)=住民提供

 車に食料や衣類、トイレットペーパーなどを積み、仲間と現地を目指した。自衛隊が応急作業を終えたばかりの道路脇には、がれきの壁ができ、壊れた舟も横たわっていた。周辺の海岸は大量のごみで埋め尽くされ、美しい三陸の面影はどこにもなかった。

 海を背にすると、すぐ山が切り立つ。相川地区はそんな典型的な東北の集落だった。地域住民は約350人。沿岸部で暮らす14人が津波の犠牲になり、60戸近くが流されたという。井上さんは、家を失った住民たちが身を寄せているという高台の保育所に向かった。

 見るものすべて、目を疑うしかなかった。

 出入り口には、なみなみと水をためる大きなタンクがあり、パイプから絶えず水が流れ込んでいた。水は飲料にも洗顔にも手洗いにも使われ、がれきで作ったかまどから、炊きたてのご飯の匂いが漂ってくる。

 風呂は? 石巻市街地の避難所では、週1度しか風呂に入れず、不衛生やストレスが顕在化していた。聞いて驚いた。相川地区では、必要な水はすべて山から引き、ワカメ養殖のタンクを改良した湯船で、みんなで交代しながら風呂につかっているというのだ。届けた支援物資の中で喜ばれたのは、意外にも、東京から持ってきた文庫本の小説や絵本だった。

 孤絶した集落の住民が毎朝、作りたてのおにぎりを食べ、温かいみそ汁をすすり、風呂に入る――。こんなことがどうしてできる? 井上さんは「田舎の底力」に、戦慄のようなものを覚えた。

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1765829 0 企画・連載 2021/01/13 05:00:00 2021/01/13 13:58:49 エトキ後出し https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210112-OYT1I50065-T.jpg?type=thumbnail

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