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最大の被災地で何が?「中心市街」活気なき再興、「新市街」は集団移転で栄え…[断面]<2>

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 復興事業を終えると、「二つの街」ができていた。人口が急増したのに行政サービスが行き届かない新市街と、公共施設が続々と建っても人が集まらない古くからの中心市街だ。3000人超が犠牲となり、東日本大震災最大の被災地とも言われた宮城県石巻市で、何が起きたのか。

内陸を開発

 市内では、全住宅の76%にあたる約5万6000棟が津波に襲われ、このうち2万棟が全壊した。早急に多くの宅地が必要だった。リアス式海岸が延び、新たな宅地の確保に苦しむ被災地のなかで、石巻には強みがあった。内陸に、宅地転用が可能な農地が広がっていたことだ。

 市内最大の集団移転先となったのは、JR石巻駅や市役所から約4キロ離れた「新蛇田」地区。隣接する「蛇田」地区は、三陸沿岸道のインターチェンジ、大型商業施設のイオンモール石巻もあり、震災前から開発が進んでいた郊外の新興住宅地だ。

 新蛇田の地権者は、農地の売却に積極的で、用地取得もスムーズに進んだ。開発済みの住宅地に近いため、インフラ整備にも大工事は必要なかった。「これだけ条件のそろった土地が短期間で手に入ったのは大きかった」。市の復興事業で指揮を執り、2014~16年度には担当部長を務めた堀内賢市さん(64)はそう話す。

 市は73・9ヘクタールを造成して災害公営住宅30棟計924戸を建設、戸建て1111戸の分譲地も整え、集団移転を実現させた。整然とした街並みに、ゆったりとした道路。JRの新駅「石巻あゆみ野駅」もできた。新蛇田の人口は、震災前の約100人から5000人超に増え、民間企業も商機を逃さず、スーパーや飲食店などの出店が相次いだ。おのずと、若い世帯が集まった。

 だが、その新たな市街に、市が国の復興予算を活用して整備したのは、新駅前の広場と8か所の公園だけだ。「新蛇田はあくまでも、『住まいの確保』のための場所だった」(市幹部)からだ。

 震災後、人口減少が加速する被災地のなかで、蛇田、新蛇田の連結によって誕生した新市街が、仙台市などへの住民の流出を食い止めたという側面はある。

 ただ、子育て世代には不満もある。この春に長女が就学するという30歳代の男性は「子育て支援施設もないし、小学校は1校だけ。子供の足だと通学に1時間近くもかかる」と漏らす。

理想と現実

 市が力を注いだのは新蛇田ではなく、石巻駅周辺の中心市街だった。伊達藩の時代から水上交易の要衝として栄えた旧北上川沿い、「川湊かわみなと」と呼ばれるエリアだ。歴史の息づく場所だが、全国の地方都市の例に漏れず、空き店舗が目立ち始めていた。市は、その再興を目指した。

 沿岸部にあった市立病院を移転させ、復興予算をつぎ込んで、ホールや会議室を備えた「ささえあいセンター」など6施設を整備した。地区住民の4割近くが65歳以上だが、児童館も建てた。「人が集まる魅力的な中心市街」を思い描いていたのだ。

 しかし、民間活力で盛り上がる蛇田、新蛇田への人の流れは止まらなかった。中心市街の人口は震災前より減り、今年1月に公表された市民の意識調査では、中心市街の利用頻度は「月1回程度」「ほとんど行かない」が合わせて半数を超えた。石巻駅前で理容室を営む70歳代の女性は「ここには一等地だという意識が残っているだけ」と話す。

 市も、計画段階で住民の声に耳を傾ける努力はした。ただ、意見を求めた先は震災前と同じく、商工会や町内会の代表者。子育てなどに区切りがついた人が多く、その大半は「石巻を元通りにして」と望んだ。

 「100年分の事業を10年でやった」。堀内さんにはそんな自負がある。だが、復興予算を使える期間には制約があり、スピードを重視せざるを得なかった。「若い世代とも話し合っておけば、民間の力をもっと借りていれば、街づくりのアイデアの引き出しをたくさん持っていれば、街の姿は違ったかもしれない」

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1891626 0 企画・連載 2021/03/07 05:00:00 2021/03/08 14:29:01 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210308-OYT1I50047-T.jpg?type=thumbnail

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