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【なら寺社散歩】慈愛の祈り 深く

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 「第72回正倉院展」が10月24日~11月9日、奈良市の奈良国立博物館で開かれる。聖武天皇の遺愛品とともに、妻の光明皇后が東大寺の盧舎那仏るしゃなぶつ(大仏)に献納した薬も数多く出展される。仏教文化に詳しい半蔵門ミュージアム(東京)館長の西山厚さんに、医療や福祉に尽くした皇后ゆかりの場所を案内してもらい、とっておきの話に耳を傾けた。

光明皇后ゆかりの地へ

 「聖武天皇や光明皇后が生きた奈良時代は、仏教の力で国をまもり、みんなを幸せにしようとした時代だったのです」

法華寺を訪れ、光明皇后の伝説を紹介する西山さん(奈良市で)
法華寺を訪れ、光明皇后の伝説を紹介する西山さん(奈良市で)

 そう指摘する西山さんが訪れたのは、奈良市の法華寺(地図《1》)。光明皇后の発願で、平城宮の東に建てられた由緒ある寺だ。

 境内には「浴室からふろ」と呼ばれる蒸し風呂がある。「我自ら千人のあかを去らん」と願い、皇后自らが病人らの体を洗ったという伝説が残る。

 元々、ここには皇后の父・藤原不比等の邸宅があった。聖武天皇が大仏を紫香楽しがらき(滋賀県甲賀市)に造ろうとして、4年半にわたって奈良を離れたことがある。その間に荒れ果ててしまったのかもしれないという。「皇后は父の邸宅が荒れているのを悲しみ、寺に造り替えたのではないでしょうか」。西山さんは想像する。

新薬師寺
新薬師寺

 春日大社近くにある新薬師寺《2》も西山さんお薦めだ。この寺も光明皇后が創建した。近年の発掘調査で、当初の金堂が東西約60メートルもの大伽藍がらんだったことがわかった。そこには病気を治す力があると信じられた7体の薬師如来がまつられていたという。天皇が病気の際には、平癒を願う祈りがささげられた。

 今回出展される薬についても語ってくれた。奈良時代に流行した天然痘てんねんとうでは、国内で100万人が亡くなったとも言われている。「国を再生させるため、聖武天皇は、太陽のようにすべての存在に明かりとぬくもりをくれる大仏を造ることを決意しました」

東大寺
東大寺

 752年、東大寺《3》で大仏開眼供養会かいげんくようえが開かれた。その4年後、天皇が56歳で亡くなると、皇后は天皇が大切にしていた品々を、大仏にささげた。60種の薬も献納し、目録に「病で苦しむ人のために使ってください」と記した。

 目録には、この薬を服用すれば体と心の病がなくなると書かれていて、「無夭折(幼いうちに死なない)」との記述もある。

 聖武天皇と光明皇后は若い頃、長男を満1歳を待たずに亡くしている。「わが子と夫をうしなった女性の深い悲しみと、多くの人を救いたいとの願いが、この3文字から感じられます」。悠久の時を超え、光明皇后の思いにふれる秋の古都を訪ねてみてはどうだろう。

病気平癒や弱者救済

行基菩薩
行基菩薩
西大寺
西大寺

 このほか、奈良市の薬師寺《4》は、聖武天皇の曽祖父・天武天皇が皇后(後の持統天皇)の病気平癒を願い、建立した。喜光寺《5》は大仏造立を助けた僧・行基による創建だ。近鉄奈良駅前には行基像《6》が立ち、若者の待ち合わせスポットにもなっている。

 西大寺《7》は、鎌倉時代に叡尊えいそんや、忍性にんしょうが貧者や病者を救済した社会活動で名高い。新型コロナウイルスの感染が広がる現在、春日大社《8》や東大寺をはじめ、どの寺社も祈りを続けている。

 文・西田朋子
 写真・原田拓未

 【アクセス】近鉄奈良駅には、近鉄大阪難波駅から快速急行で約40分。近鉄京都駅からは特急で約35分。JR奈良駅には、大阪駅から大和路快速で。京都駅からは、みやこ路快速が便利。

 にしやま・あつし 1953年生まれ、徳島県出身。京都大大学院博士課程修了。元奈良国立博物館学芸部長で30年以上にわたり、仏教に関する文化財の調査や正倉院展に携わる。著書に「仏教発見!」など。帝塚山大客員教授。

西山さんの正倉院展オススメ宝物

五色龍歯
五色龍歯

 象の臼歯の化石とみられる。重さ4・6キロ。「龍歯」は漢方薬の一種で、鎮静効果を持つとされる。光明皇后が大仏にささげた薬の目録「種々薬帳しゅじゅやくちょう」に記載されているが、正倉院宝物の出入記録によると、使われた痕跡はないという。インド産の可能性を指摘されている。

正倉院クイズに挑戦

 オンラインにも設問 正解者に抽選でプレゼント
 正倉院の宝物にまつわるクイズに挑戦! さらに楽しみたい方は読売新聞オンラインの正倉院展「自宅で楽しもう!」ページ(https://www.yomiuri.co.jp/shosoin/jitaku/)へ。正解者に抽選でプレゼントが当たる設問もあります。
 問題 正倉院の宝物には「黄熟香おうじゅくこう」という香木(今回は非出展)もある。その別名「蘭奢待らんじゃたい」に隠された寺の名前は?(答えは最後に)
 〈1〉東大寺 〈2〉西大寺 〈3〉大安寺

第72回正倉院展

 奈良国立博物館(奈良市登大路町)
 10月24日(土)~11月9日(月)
 ※会期中無休、日時指定入場制
 【開館時間】
 午前9時~午後6時。金・土・日曜と祝日は午後8時まで。
 【前売り日時指定券】
 通常券(一般)2000円、同(中高大生)1500円ほか
 ※当日券はありません。
 ※観覧には前売り日時指定券の予約・発券が必要です。各種手数料がかかる場合があります。
 ※ローソンチケットとチケットぴあにて販売中。奈良国立博物館での販売はありません。
 ※購入方法により、最終販売日時は異なりますが、売り切れ次第、終了します。
 詳細はハローダイヤル((電)050・5542・8600)か、奈良博ホームページ読売新聞オンラインで。
 【主催】
 奈良国立博物館
 【協賛】
 岩谷産業、NTT西日本、関西電気保安協会、近畿日本鉄道、JR東海、JR西日本、シオノギヘルスケア、ダイキン工業、大和ハウス工業、中西金属工業、丸一鋼管、大和農園
 【特別協力】
 読売新聞社
 【協力】
 読売テレビほか

 答え 〈1〉東大寺 蘭の「門」の中と、「奢」の上、「待」の右側を組み合わせます。

無断転載・複製を禁じます
1528345 0 正倉院 2020/10/07 13:00:00 2020/10/17 17:01:31 2020/10/17 17:01:31 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201007-OYT8I50020-T.jpg?type=thumbnail

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