天平人 弾む遊び心…正倉院展、あす開幕

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 「第72回正倉院展」が24日、奈良市の奈良国立博物館で開幕する。出展される59件の至宝のうち、注目の一つはユニークな遊戯具。天平人の「遊び心」をのぞいてみた。

民間芸能を描く

【墨絵弾弓】元々は武器だったが、玉をはじいて遊ぶ遊戯具となった(長さ162センチ) (右拡大写真)組み体操のような曲芸を披露する人たち(上部)や頭で支えた高い棒に何人も登る軽業(下部)が描かれている
【墨絵弾弓】元々は武器だったが、玉をはじいて遊ぶ遊戯具となった(長さ162センチ) (右拡大写真)組み体操のような曲芸を披露する人たち(上部)や頭で支えた高い棒に何人も登る軽業(下部)が描かれている

 「墨絵弾弓すみえのだんきゅう」は、弓といっても武器ではない。丸い玉をはじいて遊ぶ木製の遊戯具だ。長さ162センチで、内側には大きさ1~2・5センチの人物がびっしりと描かれている。

 その数、96人。太鼓や笛、琵琶などの楽器を演奏する人や、組み体操のような曲芸を披露する人らの姿が精密かつ、ユーモラスなタッチで描写されている。

 演奏や曲芸の絵は、「散楽さんがく」という民間芸能を表現している。西アジアから中国を経て日本に伝わったもので、奈良時代には「散楽戸」と呼ばれる役所が置かれ、東大寺の大仏開眼会かいげんえなどで盛んに演じられた。

 散楽は「雑伎」とも言われる。当時の様々な曲芸の様子は、中国雑技団の演技を思い浮かべればいい。後に散楽がなまって「さるがく(猿楽)」となり、狂言や能に発展したと考えられている。

 なぜ、散楽が墨絵弾弓に描かれたのだろうか。奈良国立博物館の谷口耕生・教育室長は「墨絵弾弓には描かれていないが、散楽には弾弓を意味する『打弾』や『飛弾伎』という演目があった、という史料がある。このため、弓を装飾する絵の題材としてふさわしかったのだろう」と解説する。

大陸文化に憧れ

 遊戯にまつわる宝物はほかにも出展される。「桑木木画碁局くわのきもくがのききょく」は象牙や金を使った様々な装飾技法を凝らした碁盤。「紫檀槽琵琶したんのそうのびわ」は、古代ペルシャに起源を持つ4弦琵琶で、バチの当たる部分には山水や鳥が描かれている。

 天平の時代は、それまでにはなかった「遊び」が流行した時代でもある。貴人から庶民まで、囲碁や双六すごろくのようなゲーム、様々な音楽、そして総合的な娯楽である散楽を楽しんだ。

 あくなき好奇心と遊び心、そして大陸文化への憧れ。そんなことが、正倉院宝物から見てとれる。

【桑木木画碁局】様々な技巧が凝らされている(縦52センチ、横51・9センチ、高さ15・5センチ)
【桑木木画碁局】様々な技巧が凝らされている(縦52センチ、横51・9センチ、高さ15・5センチ)
【紫檀槽琵琶】古代ペルシャに起源を持つ4弦琵琶(全長98.5センチ、最大幅41.2センチ)
【紫檀槽琵琶】古代ペルシャに起源を持つ4弦琵琶(全長98.5センチ、最大幅41.2センチ)

西アジア文化 薫る面

【伎楽面・酔胡従】酔ったソグド人の従者を表した面(縦28.5センチ、横22.3センチ、奥行き28.6センチ)
【伎楽面・酔胡従】酔ったソグド人の従者を表した面(縦28.5センチ、横22.3センチ、奥行き28.6センチ)

 伎楽ぎがくも大仏開眼会などで演じられた仮面劇。朝鮮半島・百済から伝わったとされるが、仮面のエキゾチックな顔立ちは、西アジアや南アジアの文化の影響を感じさせる。今回、伎楽面の「童子面どうじめん」と「老相ろうそう面」、「酔胡従すいこじゅう面」が出展される。酔胡従の「胡」はシルクロード交易に携わったソグド人を示すという。

オンラインで楽しもう

 会場でご覧いただけない方々のために、見どころを紹介した動画を読売新聞オンラインで配信しています。「紡ぐプロジェクト」のサイトでは、正倉院宝物を守り伝える取り組みを紹介する動画を配信中です。10月24日より、公式図録・オリジナルグッズの通信販売も特設サイトにて実施します。

読売新聞オンライン 紡ぐプロジェクト 通販特設サイト

 *橿原支局長 関口和哉が担当しました。

第72回正倉院展

  奈良国立博物館 (奈良市登大路町)
 10月24日(土)~11月9日(月)※会期中無休
  【開館時間】 午前9時~午後6時。金・土・日曜と祝日は午後8時まで。
 ※本展は事前予約の日時指定入場制です。チケットはほぼ完売しており、奈良国立博物館での当日券の販売はありません。
 詳細はハローダイヤル((電)050・5542・8600)か、 奈良博ホームページ 読売新聞オンライン で。
  【主催】 奈良国立博物館
  【協賛】 岩谷産業、NTT西日本、関西電気保安協会、近畿日本鉄道、JR東海、JR西日本、シオノギヘルスケア、ダイキン工業、大和ハウス工業、中西金属工業、丸一鋼管、大和農園
  【特別協力】 読売新聞社
  【協力】 読売テレビほか
無断転載・複製を禁じます
1571317 0 正倉院 2020/10/23 12:57:00 2020/10/23 12:57:00 2020/10/23 12:57:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201023-OYT8I50046-T.jpg?type=thumbnail

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